根管治療コラム

根の治療、根管治療を受けた歯に違和感があると、「大丈夫なのか?」「治っていないのではないか?」と不安になるかと思います。特に、元々痛みがあった状態から治療を開始した場合、治療後の違和感が引かず、すぐに再治療に踏み切ったり、抜歯を宣告されてしまうこともあるかもしれません。

ここでは、根の治療を受けた歯の違和感について、その原因と対処法、再治療すべきかどうかの判断などについて、解説していきます。

根管治療後は、違和感や不快感が生じやすい

根の治療を受けた歯は、治療後に違和感や不快感、鈍い痛みを感じることが多くあります。では、それが”治療の失敗”なのかというと、決してそうではありません。

治療後に違和感が生じやすい歯の特徴

断定できるわけではありませんが、根の治療後に違和感が比較的残りやすいのは、以下のような歯です。

  • 元々長期にわたり根管治療を行っていた歯
  • 強い痛みがあった歯
  • 残っている歯質(歯の量)が少ない歯
  • 繰り返し治療を受けている歯
  • 強い薬(ペリオドン)を使用していた歯

このような歯は、治療後に違和感を生じることが多い歯であると言えます。

治療後に感じる違和感は、基本的には経過観察で問題ありません

根管治療を受けた歯の感覚が落ち着くまでどの程度の期間が必要か?ということを調べた報告によると、およそ6ヶ月の期間が必要であると報告されています。
つまり、治療後数ヶ月は、”咬んだ時に強く響く””違和感が強い””鈍い痛みがある”という症状が出やすい状態であるといえます。

また、患者様の痛みに対する感受性によっても、「違和感」と感じるのか「痛み」と感じるのかが異なります。特に”痛み”については、治療後の一時的な鈍痛なのか、それとも本当に根の治療がうまく奏功していない(治っていない)のか、慎重に判断をしなければなりません。
根の治療がうまくいっているかの判断は治療後すぐにはできず、おおよそ6ヶ月から12ヶ月の期間が経過して、初めて「治っているのか治っていないのか」がわかります。
そのため、治療後に違和感がある場合でも、術後6〜12ヶ月程度で軽減してくれる可能性が十分にあるため、経過をみていくことが推奨されます。

根管治療後の歯は、なるべく硬いものを避けるように

根管治療を受けた直後の歯は、外部の刺激に対してとても過敏になっています。
根管治療を受けた歯では、できるだけ硬いものを咬むことを避けるようにお願いしています。
特に、ナッツやおかき、硬めのパンなどは、歯にとって負担が大きい食べ物であるといえます。
違和感がそこまでなくなれば気にせず食べていただいて問題ありませんが、違和感がある間は、歯を安静にさせるという目的で、極力硬い食べ物は避ける方がよいでしょう。

気になる歯をあえて触ることは絶対にやめましょう

治療後の歯が気になると、ついつい触ってしまうという患者様もおられるかと思います。
中には、「歯ブラシでコンコンと叩く」「割り箸をゆっくり噛む」ということを行い、「やっぱりおかしい、治ってないのではないか。大丈夫なのか。」とご自身で悩まれる方もおられます。
治療をした歯の不快な感覚は、軽減するまで数ヶ月を要します。その間に刺激を加えると、感覚が過敏になり(閾値が下がり)、その過敏な状態は今も戻らなくなることがあります。
そのため、根管治療を受けた歯を「あえて触ったり、叩いたりして確かめる」ということは、自傷行為のようなものであり、歯を健康な状態に維持するためにも絶対に控えた方がよいといえます。

歯ブラシやフロス・歯間ブラシは問題ありません

違和感がある場合でも、歯ブラシやフロス・歯間ブラシなどの清掃は行なっていただいて問題ありません。歯にプラーク(磨き残し)が付着すると、歯肉炎という歯ぐきの腫れを起こし、それによる軽度の痛みが生じることもあります。また、根の治療を受けた歯の経過観察期間中は、仮歯を入れない状態のため(臼歯の場合)、多少食べ物がつまりやすくなります。そのため、しっかりと清掃をしていただくのがよいでしょう。プラークの付着を抑制し、歯肉の炎症を軽減するために、マウスリンスの併用も有効です。

歯以外に痛みの原因があることも…

歯の痛みは歯の治療で軽減することが多い一方で、”歯の痛みと感じていた痛みの原因が歯以外にある”ということもあります。

非歯原性疼痛(ひしげんせいとうつう)という痛み

ご本人の感覚ではどう考えても歯が痛いものの、実はその原因は歯ではないことがあります。これを、非歯原性疼痛といいます。
非歯原性疼痛とは、抹消神経や中枢神経(脳神経)、あるいは筋肉に由来した痛みが原因で、まるで歯が痛いように感じる状態のことを指します。
非歯原性疼痛の場合、どれだけ歯科治療を受けても痛みはおさまらず、むしろ悪化してしまう可能性もあります。
安易に治療介入せずに、痛みがどこから来ているのかを”最初に”しっかり診断することが、痛みを複雑化させないためにも重要といえます。

原因が歯と非歯原性疼痛が混合していることも

根管治療後の痛みについてはこちら

監修者情報

院長 髙井 駿佑

経歴

  • 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
  • 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
  • 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
  • 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
  • 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
  • 2023年 髙井歯科クリニック 開院

資格

  • 日本歯内療法学会 専門医
  • 米国歯内療法学会 会員
  • 日本外傷歯学会 認定医
clinic

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