ご来院までの背景
歯ぐきが大きく腫れているため近くの歯科を受診したところ、「膿が大きいため、口腔外科で膿を取る外科手術と抜歯が必要」「膿が大きく歯根嚢胞になっているため歯の治療では治らない」と説明を受けられた患者様です。


実際のやりとり
はじめまして。髙井です、よろしくお願いいたします。今回、歯根嚢胞のために嚢胞を取る外科手術と抜歯が必要と説明された、と伺っています。まずはお話を聞かせていただけますでしょうか?
数週間前に、歯の裏側の歯ぐきが大きく腫れ、いつもの歯科医院に行きました。そこでレントゲン写真を撮影したところ、「ものすごく根の先の膿が大きい」「歯根嚢胞になっているので、病院の口腔外科で嚢胞摘出の手術と、歯も抜歯するしかない」と説明を受けました。自分としては、腫れはあるものの痛みはないのと、その先生からおそらく手術は全身麻酔になると聞き、なんとか外科手術は避けたいと思いこちらを調べて受診しました。
そうだったのですね。調べてきてくださりありがとうございます。口腔外科へはもう行きましたか?
紹介状を書いてもらっていたので予約は取りましたが、まだ行っていません。行くと手術を受けるしかないような気がして、なるべく早く髙井先生に相談したいと思い、今回来させていただきました。
ありがとうございます。CTとレントゲン写真、お口の中を拝見しました。結論から言いますと、外科手術ではなく根管治療で治る可能性は十分にあるかと思います。
本当ですか!?もしそうならとても嬉しいです。ただ、前の先生からは、外科手術は必須で、歯根嚢胞を取った上で歯も抜かないといけないと言われたのですが、大丈夫なのでしょうか。
まず、いくつかお伝えしたい点があります。ひとつめは、これが本当に歯根嚢胞なのかどうかはわからない、ということです。よく、「膿が大きい=歯根嚢胞」とおっしゃる先生がいますが、これは明確に否定されています。歯根嚢胞なのか、根の先の膿(根尖性歯周炎)なのかは、レントゲンでは判断できません。本当に歯根嚢胞と診断するためには、歯ぐきを開いて病変を切り取り、病理検査を出すしかありません。
ふたつめは、膿が大きいことは抜歯の理由にはならない、ということです。一般的には、根の先の膿が大きいことで、治療しても治らないと言われることがあります。しかし、歯内療法・根管治療を専門的に学んでいるDrは、根の先の膿の大きさは抜歯の理由にならないことを知っています。確かに、根の先の膿が大きいと、治るのに時間はかかります。しかし、「膿が大きいから治らない」ということはありません。
そうなんですね!よくわかりました。ネットでは、「膿が大きい歯を残す場合、歯根端切除術という根の先を切る外科手術が必要」と見たのですが、これも必要ないのでしょうか?
はい。現時点で、歯根端切除術は必要ありません。根の先の膿は、歯に細菌感染が進んでいることが原因です。そのため、まずは通常通りの根管治療を行い、根の先の膿・骨の吸収がどの程度回復してくれるかの経過観察をおこないます。おおよ12ヶ月程度、治癒に時間がかかると思われます。12ヶ月経過時点で術前と術後のCT画像を比較し、治っていれば何の問題もありません。もしもそこで治っていない場合に、初めて歯根端切除術が選択肢としてあがります。
いきなり外科手術が必要ではなく、まずは根管治療をしっかりやれば、外科手術が回避できる可能性が十分にあるということですね。
その通りです。もちろん、外科を100%しなくてよい、というわけではありませんが、回避できる可能性は十分にあると思います。
わかりました。ありがとうございます。
治療の回数や1回の治療時間はどれぐらいでしょうか。
この歯であれば1回で治療を終えることもできるのですが、感染が強い場合、より根の中の感染源を取り除くために、2回の治療回数をいただいています。1回の治療時間は60分程度です。
昔に根管治療を受けた時に、「汚れが残っている」とのことで、何十回も通院した記憶がありますが、2回で終われるんですか!?
はい。しっかりとした環境で、専門的な処置を行えば、必要以上に回数をかけることはありません。逆に、回数が増えすぎると、治療期間中に新たに細菌が入り込む可能性もあるため、できるだけ少ない回数で治療を終えることができる方がよいといえます。
わかりました!まずは外科手術が避けれて、歯を残せる可能性もあると聞き安心しました。治療をお願いしたいと思っています。よろしくお願いいたします。
以下の記事では、外科手術を回避できる可能性や、なぜ外科が必要なのか、について、詳しく解説しています。
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以下の記事では、根管治療の治療回数について詳しく解説しています。
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監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医