ご来院までの背景
1年前から左上犬歯付近の根の先の膿と腫れを自覚しておられたものの、痛みがなく治療の決心がつかないため様子を見ていたとのことでした。1ヶ月前から腫れに加えて鈍痛が生じたため近医を受診したところ、根管治療は避けられないと説明を受けられました。金属の土台(メタルポスト)が大きく、除去に伴い歯が破折するリスクがあることから、外科的歯内療法を希望し、当院を調べて受診されました。


実際のやりとり
はじめまして。歯科医師の髙井です。よろしくお願いいたします。左上の歯の根あたりの歯茎から膿が出ているとのことですが、これまでの経緯を教えていただけますでしょうか。
ずっと左上の腫れや膿が出ているのですが、痛くなかったため様子を見ていました。ただ、先月になり徐々に痛み始めたため、近くのかかりつけの歯医者さんへ行きました。レントゲンを撮影したところ、「根の先に膿がたまっており、根管治療をするしかない。」「金属の芯の棒が太いため、外すと歯が割れるかもしれない。」と言われました。その先生は、根の治療の専門ではなかったのですが、外科的な方法をすればかぶせものや土台を外さずに治療ができると聞き、専門の先生を調べてこちらにうかがいました。
そうだったのですね。ありがとうございます。それでは一度、お口の中の状態を見させていただきますね。
(詳しい歯の検査を実施)
拝見したところ、確かに、現在左上の4番目の歯の根の先が腫れている状態です。出たり引いたりは繰り返していると思いますが、前後の歯の検査結果は正常(神経が生きている状態)であったため、前から4番目の歯が原因と考えて間違いないと思います。このセラミックの歯はいつごろ治療した歯ですか?
これは2年ほど前に、かぶせものだけやりかえました。確か根の治療はしていないと思います。
ありがとうございます。神経の治療を行っている歯の場合、歯が破折しているリスクがあるのですが、今現在検査したところは明らかな破折はなさそうです。ただ、歯の内部、あるいは深い部分で割れている可能性は否定しきれません。
この歯は、土台を触ると割れてしまうと言われたのですが…
かぶせものや土台を除去する方法はいくつかあり、慎重に行うことで、極力歯への負担は減らすことができます。ただ、おっしゃるように、除去する時に絶対に割れないかというと、そうではありません。除去に伴う破折のリスクや、かぶせものの適合がしっかり合っており虫歯の問題はなさそうな点から、この歯に対しては外科的なアプローチ、その中でも、歯根端切除術という治療が適応であると言えます。
歯茎を切って、根の先の膿を取り除くと聞いたのですが、こんな歯でもできるのでしょうか。
現時点では、問題なく治療可能かと思います。ただし、歯茎を切って行う処置のため、術後の腫れや痛み、あとは歯茎が若干下がるリスクはあります。それと、歯茎を大きく開けてみて、歯の根が割れてしまっている可能性もあります。歯根破折といいますが、すでにこれが起こっていると、治療を行っても長持ちする可能性は極めて低くなります。
わかりました。もし割れてしまっている場合は、諦めて抜く以外方法はないないかと思っています。手術と聞いたのでとても不安なのですが、全身麻酔でする治療なのでしょうか?
いいえ。麻酔は通常の歯科治療で行う局所麻酔で行います。手術といっても、麻酔に関してはいつも受けられている歯科治療と大きな違いはありません。術後も腫れや痛みは多少ありますが、痛みについては通常の痛み止めでコントロールできることがほとんどです。
ありがとうございます。なんとか自分の歯を残したいと思っているので、治療をお願いいたします。
かしこまりました。次回までに、再度CTを精査・分析し、しっかり準備して処置にのぞみます。よろしくお願いいたします。
監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医