根管治療コラム

根管治療に関わらず、歯科医院で治療が必要となった時に、CTの撮影をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

歯科ではレントゲンを日常的に撮影しますが、「何度もレントゲンを撮りたくないな」「被曝が心配」といったお声もよく聞きます。

ここでは、根管治療時にCTはなぜ撮影が必要なのか。そのメリットやデメリットなどを、歯内療法学会専門医が解説します。

CT撮影時の被曝の影響はほとんどない

歯科医院で撮影するCTは、照射範囲も狭いため、被曝量は非常に低く設定されています。医科用の全身を撮影するCTに比べ、その被曝量は1/10以下といわれています。レントゲンの被曝は安全な被曝量というのが定められており、その単位は年間100ミリシーベルトといわれています。その中で、歯科用CTの被曝量は0.1ミリシーベルトであり、これは東京からニューヨークへ飛行機で移動した際の宇宙からの放射線被曝量と同程度といわれています。つまり、歯科用CTの被曝量は、ほとんどないと言っても過言ではありません。

複数回レントゲンを撮影して体調は悪くなる?

患者様の中には、「何度もレントゲンを撮ると体調が悪くなる」「今年に入ってすでに何度も撮影しているから撮影したくない」とおっしゃられる方もおられます。もちろん、無理に撮影を勧めるということは決してありません。しかし、上記の図のように、特に歯科で撮影するレントゲンが身体に及ぼす影響は、限りなく0であるといえます。そのため、「できるだけ無駄な被曝は避け、撮影するメリットがある場合に撮影する」というのが、現在推奨されている考え方といえます。

CT撮影の必要性とは?CT撮影のメリット

歯科では、通常撮影する「デンタルレントゲン」という、フィルムをお口の中に入れて撮影する小さなレントゲン写真を撮影します。しかし、それだけでは歯の解剖学的な形態や、根の先の状態を正しく診断することはできません。CTを撮影することは本当に必要なのでしょうか。その必要性とメリットについて解説します。

通常のレントゲン”だけ”では正確な診断は難しい

歯の治療、特に根管治療は、非常に細かな治療が必要となります。また、根の先に膿があるのかどうかによっても、成功率や治療戦略が変わるため、基本的には根管治療とCTはセットで考える方がよいと思われます。なぜなら、CTを”撮らないこと”で、「問題の見逃し」や「治療中の思いがけないトラブル」につながる可能性があるからです。

CTによって、得られる歯の情報が圧倒的に増える

通常のデンタルレントゲン写真は、一方向から撮影したものを平面のフィルムに写すので、どうしても得られる情報に限界があります。一方でCTを撮影すると、「歯の根の先に病変があるのか」「隠れた根管はないか」「歯の根の曲がり具合は」「何か問題は起こっていないか」といった、デンタルレントゲン写真だけでは得られない多くの情報が得られます。これらはすべて、根管治療を安全かつ確実に行うためには必要であり、根管治療とCTは切り離せないといえます。特に、再根管治療(過去に治療をした歯のやり直し)の場合、前医でどのような治療を受けているかはCTを撮影しなければほとんど把握することはできません。

特に外科的歯内療法ではCTが必須

外科的歯内療法とは、通常の根管治療とは異なり、根の先端部分を直接切除する方法です。特に歯根端切除術では、CTによって「根の長さが何mmあるのか」「何mm切除するのか」「周囲に傷つけてはいけない組織がないか」などを、精査した上で治療にのぞみます。通常の根管治療は、CTなしでも治療をすることは可能ですが、外科的治療の場合にCT撮影なしで行うことは絶対にできません。なぜなら、CTで三次元的な評価をしないまま外科治療を行うと、血管や神経を傷つけてしまうことで大きな事故につながる可能性があるからです。治療を成功させるためにも、事故を防ぐためにも、外科治療時のCT撮影は必須であるといえます。

CTを撮影するデメリット

CTを撮影することのデメリットも存在します。まずは、被曝の問題です。歯科用CTの被曝量はごくごくわずかであることは既に述べましたが、完全な0ではありません。そのため、”撮影するメリットが被曝のデメリットを上回る場合に撮影する”というのが、現在の基本的なCT撮影に対する考え方であるといえます。

CTを撮影せずに根管治療はできる?

CTを撮影せずに、根管治療を行うことは可能です。その場合、従来のデンタルレントゲン写真のみで検査・診断し、治療を進めていきます。しかし、CTを撮影しない根管治療は、デメリット(リスク)も存在します。

CTのない根管治療のデメリット(リスク)

CTがないと、根管の詳しい情報が得られません。それに伴い、「術前の診断精度が下がる」「治療中に合併症が起こるリスクがやや上がる」「見逃しの根管がある可能」「事前に根の曲がり具合がわからないので、ファイル破折が起こる可能性がある」などのデメリットがあります。しかし、根管治療が行えるか否かというと、CTなしでも治療を行うことは可能です。

まとめ

CTを撮影することは、多くの情報を得られる一方で、被曝量の問題があります。現在のCT装置は以前に比べて被曝量は非常に少なく、身体への影響はほぼないといっても過言ではありません。

基本的には、安心かつ確実な根管治療を行うためにCTの撮影を推奨しています。しかし、どうしても撮影することに抵抗がある場合は、遠慮なくご相談ください。

監修者情報

院長 髙井 駿佑

経歴

  • 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
  • 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
  • 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
  • 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
  • 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
  • 2023年 髙井歯科クリニック 開院

資格

  • 日本歯内療法学会 専門医
  • 米国歯内療法学会 会員
  • 日本外傷歯学会 認定医
clinic

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