根管治療では、様々な薬剤を使用し、根の中の細菌に対してアプローチします。
そのような中でも、現在世界的には使用されていないものの、日本ではいまだに使われている、ペリオドンという薬があります。
いわゆる”神経を殺す”薬といわれますが、どのような特徴があるのでしょうか。
その特徴や副作用について、日本歯内療法学会専門医が解説します。
目次
根管治療で使用する薬の中には、毒性が強いものも
昔から根管治療では、様々な薬が使用されてきました。
数十年前までは主流であったものが、現在では健康被害や発がん性、体への影響などから、使用されなくなったものも多数存在します。
しかし中には、現在でも多くの歯科医院で使用されているが、実は毒性が強いものもあります。
それは、”ペリオドン”という薬です。

神経を殺す薬であるペリオドン
特にこのペリオドンという薬が使用されるのは、”初めて根の治療を行った時”である場合が多いです。
根管治療の中でも、抜髄(ばつずい)という処置が該当します。
ペリオドンという薬は軟膏のような性状で、水1滴分程度を根の中に入れ、次回来院時まで上から封鎖するような使い方をします(クリニックによっては、”お薬の交換”という表現をする場合もあります)。
この薬の作用は、”残った神経を壊死させて殺す”ものです。
特に、歯の痛みが強い場合には、痛みの原因である神経(歯髄組織)を物理的に取り除くことが推奨されます。
しかし、物理的に取り除くことが難しい場合や、あるいは根管治療時のルーティーンとして、神経を殺すペリオドンを使用しているクリニックもあります。
ペリオドンの乱用によって、歯が非常に過敏な状態に
このペリオドンは、毒性が強く、何度も使用することで歯が非常に過敏な状態になります。
そうすると、”歯に触れただけでも痛い””本来であれば痛みが取り除けているはずの状態であっても痛みが続く”ということに繋がります。
一度でも痛みが長く続くと、人の脳にはその痛みの記憶が残ってしまい、術後非常に長い期間、鈍痛や強い違和感が継続する可能性があります。
また、海外では既にこのような有害性の高い材料の使用は禁止されていますが、日本では未だに多くの歯科医院で使用されています。
ペリオドンを使用すると、非常に強い薬のにおいがすることも
ペリオドンは、ホルマリン系の独特なにおいを発します。薬を歯の内部に入れて、完全に封鎖ができていればそこまでにおいはしませんが、わずかでも隙間が生じると、お口全体に強い不快なにおいがひろがります。
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においが漏れているということは、薬の成分も漏れていることに他なりません。
ペリオドンの成分であるホルムアルデヒドは、アレルギー反応やアナフィラキシーショック、歯肉の壊死などのリスクがあります。
そのため、薬の強いにおいが漏れている場合、早めに歯科医院を受診することが推奨されます。
当院では、ペリオドンのような体への害が強い薬は一切使用していません
当院では、ペリオドンをはじめとする有害性の強い材料は使用していません。
1回目の治療が終わり、来院時までに歯の中に入れる薬は、世界的にもゴールドスタンダードとされる、水酸化カルシウム製剤を使用しています。
水酸化カルシウム製剤には抗菌性などの作用があり、かつペリオドンのような患者様の体への危険性はほとんどありません。
前医でペリオドンを使用されて来院した実際の患者様
以下で紹介する患者様は、他院で根管治療を開始したものの痛みが続くため、髙井歯科クリニックへ相談に来られた40代の患者様です。
実際に来院され口の中を拝見すると、すでにペリオドンの独特な薬品臭がしており、歯も過敏になっている状態でした。
初診来院時の患者様とのやりとりと、実際の治療経過についてまとめています。根管治療の薬のにおいで不安な方は、ぜひご覧ください。
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監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医