背景と経過
かかりつけ歯科医院の先生よりご紹介いただいた患者様です。噛むと痛みがあり、レントゲンを撮影すると、根の先の骨の吸収が大きく、上顎洞(鼻の横の空洞)の骨も溶けているため、治療は難しく抜歯の適応であるとご説明を受けたとのことです。根管治療による歯の保存の可能性にかけて、当院をご紹介していただきました。
症例紹介


治療前

治療後

根管洗浄 | 次亜塩素酸ナトリウム溶液・EDTA溶液 |
根管貼薬 | 水酸化カルシウム |
拡大号数 | MB根,MB2根,P根:#50/04 DB根:#60/04 |
根管充填 | バイオセラミックシーラーを用いたHydraulic condensation technique |
Drからのコメント
非常に大きな骨吸収がある歯の根管治療症例でした。根の先の病変が大きくなり、上顎洞の骨も完全に吸収していました。根の先の病変の大きさ自体は、治癒そのものにあまり影響しないとの報告はあるものの、ここまで大きな骨吸収が治るか心配な状態でした。
治療後10ヶ月のCTにて、骨の顕著な回復が認められました。
治療前は歯がぷかぷか浮いたような状態でしたが、現在ではしっかりと治っており、良好な経過を辿っています。
上顎洞炎の症状も消失し、「治療を受けてよかった」とおっしゃっていただけました。
今後、年単位で経過をみていくと、より骨が成熟していくと考えられます。
今後も注意深く経過を追っていきたいと思います。
治療詳細
主訴 | 骨の吸収が大きいと言われた(かかりつけ歯科からのご紹介) |
治療内容 | 左上大臼歯の精密根管治療 |
治療期間 | 2回(2週間) |
費用 | 154,000円(税込) |
リスク・副作用 | 根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。 |
この患者様のセカンドオピニオン時のやりとりについては下記をご覧ください。
根の先の膿による上顎洞の骨の吸収が大きいため、ご紹介いただいた50代女性患者様|抜歯宣告を回避した精密根管治療の症例
監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医