背景と経過
過去に根管治療を受けた左上奥歯が、噛むと痛みがあるとのことで来院されました。レントゲン・CT画像にて、根の先に黒い影が認めれ、根尖性歯周炎を発症している状態でした。すでにジルコニアクラウンが装着されていたため、クラウンをはずさずに治療を行う外科的歯内療法(意図的再植術)か、通常通りの根管治療を行うかのご相談をした結果、クラウンを外して行う通常の精密根管治療をおこなうことになりました。
症例紹介


術前

根の先に黒い影が見えるのが、歯の内部への細菌感染により、根の周囲で骨吸収が起こっている部位です。
6ヶ月後

元々黒く写っていた部位が、徐々に白くなってきているのが確認できます(黄色円内)。骨はレントゲンでは白く写るため、吸収していた骨が回復していることがわかります。
18ヶ月後

根尖部分の骨が完全に回復している状態です。6ヶ月後の状態と比べ、よりはっきりと白くなっていることから、骨が成熟していることが確認できます。症状もなく、経過良好といえます。
Drからのコメント
左上7番の、比較的難易度の高い再根管治療の症例でした。
元々2−3年前に根管治療を受け、ジルコニアクラウンを装着していました。
このような場合、以下の治療選択肢があります。
①クラウンをはずして、通常通りの根管治療を行う方法
②クラウンをはずさずに、外科的なアプローチで治療を行う方法
今回の歯の場合、②の具体的な治療方法は、意図的再植術という方法をとります。意図的再植術は、一度歯を抜歯し、感染している根の先端部分を口腔外で切除し、もとに戻すという方法です。
患者様にそれぞれのメリットとデメリット、リスクをお伝えしたところ、①を選択されたため、クラウンを除去して治療を行いました。
治療詳細
主訴 | 左上奥歯で噛むと痛い |
治療内容 | 左上大臼歯の精密根管治療 |
治療期間 | 2回(2週間) |
費用 | 154,000円(税込) |
リスク・副作用 | 根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。 |
監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医