髙井歯科クリニックで行う精密根管治療の流れ
―専門医だからこそできる治療をあなたへ


「根管治療が必要と言われたが詳しく知りたい」「歯の神経の治療と言われたがよくわからないので不安」「現在根管治療で通院中だが、毎回何をされているかよくわからない」


根管治療は、歯の根の中の治療であり、歯科治療の中でも特に細かく、そして患者様にとって分かりにくい治療のひとつです。きちんと治ったのかは曖昧なまま、なんとなく治療が終了してしまった経験がある方も数多くおられます。大阪府豊中市の高井歯科クリニックは、歯の根の専門医として、アメリカ歯内療法学会のプロトコールに沿った治療を行っております。このページでは、髙井歯科クリニックで行う精密根管治療の流れについてご説明いたします。

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1本の歯の治療を終えるまで

根管治療

①検査と診断・治療方針の決定

歯髄検査やレントゲン・CTなどの検査から、診断を行い、治療方針を決定します。


解説

神経が残っている状態の場合、歯髄検査を行います。神経が生きているのか死んでいるのか、炎症が起こっている場合は神経が残せるのか残せないのかを、精密な検査のもと診断します。また、レントゲンやCTによる画像検査により、根の先の膿や骨の状態も精査し、歯に対して診断、治療方針の決定を行います。


専門的解説

歯内療法においては、歯髄と根尖周囲組織のそれぞれに対して診断名をつけます。歯髄診断は、過去に治療を受けている場合は迷うことは少ない(既根管充填歯で確定)ものの、歯髄が残っている場合、歯髄の状態を正しく把握することが、治療方針に大きく影響します(偽反応の考慮や複数検査の組み合わせによる総合的診断)。また、診断名はひとつですが、治療方法はいくつか選択肢がある場合があります。残存歯質量や根尖病変の位置、歯冠修復の状態などから、非外科的歯内療法だけでなく、外科的歯内療も含め、歯ごとにベストな方法を模索します。

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局所麻酔


表面麻酔を塗布したのちに、注入速度をコントロールできる電動の麻酔器を使用して、ゆっくりと麻酔を行います。


解説

根管治療時には、必ず麻酔をして治療を行います。「神経が死んでいる歯髄壊死や、過去に根管治療を受けている歯の再根管治療では麻酔は必要ない」と考え、麻酔なしで根管治療を行う歯科医師もいます。しかし、根の中には微細な枝分かれの根管が、根の周囲には痛覚受容器が存在していることから、神経が死んでいても根管治療時には痛みを感じます。そのため、根管治療を行う際には、どのような状態であっても麻酔が必要といえます。


専門的解説

キシロカインの表面麻酔を塗布後、33G(ゲージ)の細い針を電動麻酔器に装着して使用します。状況に応じて、下顎顎伝達麻酔(IANB)や歯根膜麻酔も行います。

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う蝕(虫歯)の除去・残存歯質の評価

装着されている修復物やう蝕(虫歯)を除去し、残存歯質(残っている歯の状態)を評価します。


解説

根管治療を行う前に、必ず古いインレーやクラウン、レジン充填やポストコアなどを除去します。その後、隠れていた虫歯を完全除去します。根管治療は、根の中の細菌感染を取り除く治療であるため、感染源である虫歯を徹底的に取り除くことから始まります。そして、残っている歯の量・幅・厚みや、歯の破折やクラックが起こっていないかどうかを精査します。この時点で、残存歯質が極めて少ない場合や、破折が認められる場合には、治療による歯の保存が期待できないため、残念ながら抜歯の適応となります。


専門的解説

根管治療の第一段階は、虫歯を完全に取り除くことです。虫歯が残った状態では、いくら根の中に薬を入れても洗浄をしても、持続的な感染が起こり治癒しない可能性があります。また、残存歯質量が少なくフェルールの確保が困難な場合、保存は困難となりますが、歯質の状況によってはクラウンレングスニングにより保存の適応となることもあります。明瞭な破折が認められる場合には治療継続は不可能であり、抜歯となります。

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隔壁作成・ラバーダム防湿

失われた歯質をレジンで補強し壁を作り、ラバーダムを装着します。


解説

修復物やう蝕を除去した後の歯は、歯の高さが失われている状態です。そこで、ラバーダムを装着するため、そして歯の厚みや高さを確保して根管治療を円滑に進めるために、レジンにより隔壁を作成します。隔壁作成後、ラバーダムを装着し、根管内の処置を開始します。ラバーダム防湿の装着中は、開口状態を楽に維持するために、ブロック状の開口器を噛んだ状態で治療をお受けいただきます。


専門的解説

虫歯を除去した後、根管内部の処置を行う前に、隔壁というレジンによる壁を作ります。これは、ラバーダムの維持、洗浄液の漏洩防止、仮封材料の厚みの確保、作業長決定の基準点の設定など、さまざまな目的があります。隔壁作製後、ラバーダムを装着してから初めて根管内の治療を開始します。ラバーダムを装着した治療時間はおおよそ60~90分程度です。ラバーダムに不安がある患者様には、静脈内鎮静という方法によって、眠ったような状態で1回で楽に根管治療を終える方法があります。

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根管拡大形成・根管洗浄・根管貼薬

根管内の細菌を減少させるために、ファイルで根の中を清掃し洗浄します。


解説

マイクロスコープによる拡大視野のもとで、細菌感染している根管内を、ファイルとよばれる細い器具を使用し綺麗に清掃します。根管拡大形成はニッケルチタンロータリーファイルを使用し、過度な歯質の切削を防ぎ、できる限り歯質を温存しながら治療を行います。さらに、次亜塩素酸ナトリウム溶液とEDTA溶液という二つの洗浄液を使用し、根管内のさらなる細菌減少を行います。また、根管治療を2回の回数で行う場合、1回目の治療後、根管内に水酸化カルシウムペーストを貼薬し、仮封材料で封鎖します。これにより、根管内の細菌の減少や、次回のアポイントまでの根管内への侵入を防止します。


専門的解説

根管形成と洗浄は、根管内細菌の減少に最も重要な役割をはたします。ニッケルチタンロータリーファイルを使用して拡大しますが、十分なストレートラインアクセスの確保、隠れた根管の探索、湾曲根管や狭窄根管への対応など、歯科医師の技術面が最も顕著になる処置でもあります。根管治療を1回で行うか2回で行うかについては、成功率や術後疼痛などの点で両者に差はないことが報告されています。そのため、比較的シンプルなケースや術前の疼痛が軽度の場合は1回法(1回で治療を完了)で、大臼歯の再治療や疼痛が強い場合は2回法で(水酸化カルシウムの貼薬を実施)治療を行います。

⑥根管充填

細菌感染を取り除いた根管内を、詰め物で封鎖します。


解説

清掃した根管内は、そのままの状態では細菌が増殖するスペースになります。そのため、根管内を緊密に封鎖する根管充填を行います。根管充填材料はガッタパーチャポイントが主体となりますが、状況に応じてMTAセメントを使用する場合もあります。


専門的解説

根管充填は、基本的にはバイオセラミックシーラーを使用したHydraulic condensation techniqueという方法で行います。ただし、根尖破壊(Open Apex)、パーフォレーションなど、何らかの偶発症が起こっているケースにおいては、MTAセメントを使用する場合もあります。

コア築造

根管治療を行うためのアクセス部分をレジン材料で封鎖します。


解説

細菌の除去を行った根管は、根管側は根管充填で、歯冠側はレジン系のコア材料で封鎖します。残存歯質量が少ない場合には、コア材料が脱離しにくいようにするために、ファイバーポストを併用します。前歯で十分な歯質がある場合は前歯の舌側のコア材料での充填で治療は完了、臼歯の場合はコア築造後に噛まない状態を維持して経過観察となります。


専門的解説

コアの築造は、ラバーダム防湿下で直接レジン系材料を使用して封鎖する直接法と、型取りをしてメタル(あるいはそのほかの材料)の材料を合着する間接法の2つの方法があります。根管治療後の細菌の侵入を防ぐという点から、根管充填後そのまま築造する直接法を採用しています。また、ファイバーポストの必要性については、残存歯質量が不足している場合には使用が推奨されますが、残存歯質が十分にある場合には使用の必要性は低いと報告されています。コアで封鎖された状態で、最低でも6ヶ月は経過観察となりますが、緊密にコア材料が充填されている場合、その隙間から根管内に細菌が侵入することはありません。

経過観察

⑧経過観察(術後6〜12ヶ月)

根管治療の治療結果を評価するために再評価を行います。


解説

臨床症状の確認、デンタルX線写真・CT撮影を行い、治癒の状態を確認、評価します。治癒している場合には、臼歯においては補綴(かぶせもの)治療へ移行しますが、痛みの症状が消失していない場合や治癒に時間がかかる場合には、術後12ヶ月まで経過観察を継続します。


専門的解説

根管治療後の評価は、根尖部の骨の状態が重要となります。しかし、骨の変化は生体の治癒反応であるため、変化に時間がかかります。そのため、治っているかどうかの判断のためにも、治療後は最低でも6ヶ月、基本的には12ヶ月程度の期間が必要となります。また、根管治療後の歯は感覚が一時的に過敏な状態となります。多くは数週間で軽減しますが、まれに感覚が落ち着くまでに6ヶ月程度の期間を要する場合もあります。術後6ヶ月の経過観察で明らかな治癒傾向を示さない場合、術後12ヶ月まで継続して経過をみます。術後12ヶ月の時点で明らかに治癒していない場合、外科的歯内療法が必要となる可能性があります。治癒している場合には、(臼歯部では)補綴修復治療へ移行します。

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根管治療後の経過観察と期間

補綴治療

補綴治療(支台歯形成・印象・TEK作成・クラウン装着)

歯の形を整え、仮歯作成、型取り後、セラミッククラウンを装着します。


解説

支台歯形成によって歯の形をクラウン形態に整え、仮歯を作成します。仮歯の装着で数週間様子を見る場合もあれば、仮歯作成と同日にセラミッククラウンの型取りを行う場合もあります。クラウンの型取りは光学スキャナーによるデジタル印象を行い、素材は強度に優れたジルコニアで作製します。完成したセラミッククラウンを装着し、治療は完了です。


専門的解説

根管治療を受けて根尖性歯周炎が治癒した臼歯において、将来最もリスクとなるのが歯の破折です。それを防ぐために、クラウンにて全周を被覆します。前歯においても、残存歯質量が少ない(元々の虫歯が大きい)場合や、審美性を改善したい場合には、クラウンにて治療を行います。根管治療が成功した歯が長持ちするためには、質の高い補綴治療が必要です。仮に、根管治療がうまくいっても、補綴治療の質(特に歯とクラウンの適合)が低い場合、長期的に治療が失敗するリスクが増加することが明らかになっています。だからこそ、根管治療後には、精密なセラミックによる修復治療が必要であるといえます。

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根管治療後の注意事項

経過と予後に関して

▼術後3~4日まで:治療に対する体の反応として、痛みや腫れ、不快症状が起こりやすい状態になります。痛みがある場合には、痛み止めを服用していただいて症状の軽減を待ちます。歯ブラシやフロス、歯間ブラシの使用は継続して行なっていただいてかまいません。

▼術後7~10日まで:極力治療した歯で噛まないようにしてください。歯の治療によって感覚が過敏になるため、弱い刺激に対しても痛みを感じる可能性があります(そこまで不快症状がなければ、硬いものを避ければある程度の食事は当たってもかまいません)。治療直後の症状は、通常は数週間で徐々に落ち着きますが、軽減するまで長い期間(6~12ヶ月)を要する場合もあります。

▼術後6ヶ月:レントゲン・CTにて根尖部の治癒の状態を確認します。術後6ヶ月の時点で治癒傾向を示し、日常生活で気にならない状態になっていれば、臼歯の場合は補綴治療(クラウン)へ移行します。治癒傾向が認められる場合には歯の感覚も落ち着いていることが多いですが、不快症状が強く残っている場合や、治癒が認められない場合には、術後12ヶ月まで継続して経過観察となります。

▼術後12ヶ月:レントゲン・CTにて根尖部の治癒の状態を確認します。この時点で症状が軽減し、レントゲン的にも良好であれば、補綴治療へ移行し治療は完了です。根の問題が治癒していない場合には、外科的歯内療法が必要となる場合があります。もしも根の問題は治癒しているものの痛みが強く残っている場合には、非歯原性疼痛の可能性が高く、専門的なペインクリニック(顎顔面疼痛専門医)へご紹介させていただきます。

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痛みを助長する行動について

根管治療を受けた歯の痛みの感覚は、治療による根の問題の治癒傾向だけではなく、患者様の性格、気質、日常生活の行動によって大きく左右されます。特に、痛みは物理的な問題に加えて脳神経系の問題が関与しているため、以下のような行動は痛みを助長する可能性が高いといえます。

  • 歯を爪や歯ブラシでコンコンとたたく
  • 歯を指や舌で押す
  • 歯の状態を確かめるためにわざと硬いものを噛む
  • 歯を鏡で見る、写真を撮る
  • 常に歯のことを調べ、自身の状態と照らし合わせる
  • 歯のことをいつも考えて過ごしている

歯の痛みに関する情報を脳にインプットすることは、脳に痛みの信号を送り続けることにつながります。そうすると、本来であれば治るものも治らず、非歯原性疼痛へと繋がります。一度痛みの記憶が定着すると、たとえ歯の問題が完治しても痛みが消えず、患者様にとっては非常に辛い状態となります。できるだけ快適な日常生活を送ることができるようになるためにも、上記の行動は避けていただいております。

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根管治療でお悩みのあなたへ

根管治療は非常に繊細で難しい歯科治療のひとつとなります。歯の寿命にも大きく関わるため、より精密な根管治療の選択が望ましい治療となります。今現在行っている根管治療が終わらない、うまくいっていない気がする、根管治療が必要と言われた、歯を抜かないといけないと言われた。など、様々なお悩みの患者様が数多く来院されています。当院では、初診時から歯の根の専門医が診察いたします。

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