セカンドオピニオン事例

ご来院までの背景

来院から1ヶ月前に、近くの歯科医院で歯ぐきの腫れのため根管治療を受け、被せ物を装着する治療まで完了した患者様です。治療完了からわずか1ヶ月で腫れが再発し、歯ぐきを押すと痛みが続いていました。再度かかりつけ歯科医院にて相談したところ、「治療して治らないなら抜歯するしかない」と説明され、何とか治す方法はないかと当院を調べて受診されました。

根管治療の再発理由と、再根管治療についてお話いたしました。

実際のやりとり

はじめまして。髙井です、よろしくお願いいたします。今回、上の前歯の根管治療が再発したと伺っています。つい1ヶ月前に治療を終えられたとのことですが、まずはお話からお聞かせください

初めは、3ヶ月ほど前に食事中の違和感を感じたのがきっかけでした。前歯が変な感じだなと思っていたのですが、歯の根本をおさえると鈍痛があったりもしたので、いつも通っている歯医者さんへ行きました。元々かぶせものが入っていたのですが、根の先に膿があるとのことで、根管治療に10回ほど通いました。

汚れが取れるまで治療を進め、少し違和感もひいてきたので、根の治療を終えてかぶせものを装着したのが1ヶ月前です。初めは特に問題なかったのですが、徐々に痛みが出てきて、3日前にかなり大きく腫れ、強い痛みがありました。明らかに歯ぐきが腫れ上がっている感じです。そこで、また相談に行ったのですが、そこでは「膿が減っていないのでもう抜くしかない」「これ以上根管治療をしても治らない」と言われました。

そうだったのですね。そこで、根の治療について調べて当院へお越しになったということですね。

はい。前歯はさすがに抜くとなると困るなと思い、何とか残したいと考えています。かかりつけの先生抜いてインプラントを勧められましたが、病院の口腔外科なら手術して膿を取ってもらうこともできる、とだけ言われ、それ以上の説明はなく、何が起こっているのか全くわからないという状態です。専門医の先生であれば、しっかり見てもらえると思ってこちらにきました。

ありがとうございます。それではまず、順番にご説明していきますね。

ありがとうございます。それではまず、順番にご説明していきますね。

まず、今の状態は、根の先の骨の吸収が大きく、いわゆる根の先に膿がたまっていると言われる状態です。根の先骨の吸収は、歯の中の細菌がたくさんいることによって起こります。根管治療は、根の中の細菌感染を取り除く治療なのですが、おそらく十分な感染源の除去ができていないことが、今回再発した一番の原因だと考えられます。

そうなんですね!自分が受けていた治療が何をしていたのか、全く知りませんでした。一応汚れを取るために何度か薬の交換もしていたのですが、それでは不十分だということでしょうか。

根管治療はとても細かく、歯の治療の中でも特殊な治療といえます。特に、マイクロスコープという顕微鏡や、細菌が根の中に入るのを防ぐラバーダムという器具を使用しない状態で治療を受けても、なかなか十分な処置は難しいと思われます。
また、治療の回数をかければ根の中の細菌が減るかというと、残念ながらそうとは言えません。しっかりと専門的な治療を行えば、治療は1回から2回程度で十分完了します。

そんな少ない回数で終われるんですね!ただ、どうして治療をしてこんなにもすぐに再発したのでしょうか…

レントゲンとCT画像から、根の中の細菌を減らす処置も、どこまでできているかというとやや疑問が残ります。このレントゲンでは、歯の内部の隙間や、根の先に詰め物が入っていない部分が多く残っています。このエリアは中が空洞になっているため、残った細菌が増殖するスペースになります。そのため、正直に申し上げますと、症状が引いたのは治療に一時的に反応しただけで、根本的には治っていなかった、と考えてよいのではないかと思います。

そうだったのですね。ネットで見ても、根の治療は普通の歯医者さんでもかなり難しいと載っていたので、仕方ないですね。外科手術を受けてみては?と言われたのですが、それが何だったのかは先生にはわかりますか?

その先生が何を意図していたのかは不明ですが、可能性は二つあります。ひとつは、歯根端切除術という、根の先端を部分的に切除し、歯を残す治療を依頼するという可能性。もうひとつは、抜歯とともに、根の先の膿の袋を取る処置を依頼するという可能性です。ただ、まずは通常の根の治療(再根管治療)をしっかりとおこなってみることが第一選択であるといえます。もしも再根管治療で治らなければ、外科的な方法が必要になります。

一度治療をして再発した歯でも、もう一度根管治療をして治るのでしょうか?

治る可能性は十分にあると思います。
今現在は、根の中に細菌がたくさん残っている状態です。まずはそれを徹底的に取り除き、しっかりと封鎖し、6ヶ月程度様子を見ます。うまく治る方向へ進めば、身体の免疫力で大きな骨の吸収も再生し、元に戻ってくれます。

こんなに大きな膿でも、消えて骨が戻るんですね!治療を始めると、前歯はどうなりますか?

もしもこれが奥歯であれば、噛む力がかからないように、かぶせものは入れない状態で経過観察となります。しかし、前歯であれば、まず初回の治療時に今の被せ物をはずし、すぐに仮の歯を作ります。根管治療はおそらく2回で終えることができると思いますが、歯医者を出る時には必ず仮歯が入った状態でお帰りいただきますので、安心してください。

また、再根管治療で治る確率は、おおよそ70%程度です。これが高いか低いかについては患者様によって捉え方が異なりますが、10本中7本は再根管治療で治ってくれます。もしも治らない場合には、次は外科的歯内療法(歯根端切除術)という治療方法で治す形になります。歯根端切除術では、歯が割れていたりしなければ、成功率はおおよそ90%程度と言われています。もしも必要になった場合には、また改めて詳しくご説明いたします。

わかりました。ありがとうございます。
今は歯ぐきを押すとかなり痛いので、ちゃんと治して自分の歯を残したいと思っています。
よろしくお願いいたします。

それでは、次回から治療を進めていきますね。こちらこそ、よろしくお願いいたします。

以下の記事では、今回お話した内容に関連する内容を詳しくまとめています。
根管治療の再発でお悩みの患者様は、ぜひご覧ください。

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監修者情報

院長 髙井 駿佑

経歴

  • 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
  • 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
  • 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
  • 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
  • 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
  • 2023年 髙井歯科クリニック 開院

資格

  • 日本歯内療法学会 専門医
  • 米国歯内療法学会 会員
  • 日本外傷歯学会 認定医
clinic

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