ご来院までの背景
2年前から歯茎に腫れと膿があり、痛みはありませんでした。かかりつけの歯科医院では、「レントゲンで根の先に膿がたまっている。根管治療のやり直しが必要だが、根管治療の再治療は難しいため様子を見ましょう」と説明を受け、この2年間様子見を続けていました。
しかし、1ヶ月前から噛む時に鈍痛が生じるようになり、いよいよ根の治療が必要とのことで、患者様ご自身で根管治療の専門医(日本歯内療法学会専門医)が在籍しているクリニックを検索するようになりました。
いくつかの医院を候補とし、比較した結果、“一番優しく信頼できそう”との理由で、当院を受診されました。

実際のやりとり
こんにちは。歯科医師の髙井です。どうぞよろしくお願いいたします。今回、左下の歯ぐきが腫れているとのことなのですが、現在どのような状況かお話聞かせていただけますか?
実は2年ほど前からずっと腫れと膿が出ている状態でした。10年以上前に根の治療をしている歯なのですが、かかりつけの先生からは、「根の治療のやり直しは難しいから様子を見ましょう」と言われてずっと様子見を続けていました。
そうだったのですね。今回、治療を決断したのは何がきっかけだったのでしょうか。
先月から、食事中に噛むと鈍い痛みを感じるようになりました。かかりつけの先生に相談したところ、「さらにもう少し様子を見ましょう」と言われたので、自分で根管治療が得意な先生を調べることにしました。
(大阪府外で遠方からの来院だったため)、当院はどのようにお調べになりましたか?
根の治療の学会(日本歯内療法学会)の専門医を調べて、いくつかの歯科医院を候補にしていました。歯医者選びは迷うのと決めるのに勇気がいるので、一番優しそうで信頼できそうな先生にお願いしようと決めてこちらを受診しました。
そのように言ってくださりありがとうございます。それでは一度、検査から進めていきますね。
(口腔内の検査とレントゲン検査)
お疲れ様でした。見たところ、古いセラミックのかぶせもの(クラウン)と太いメタルの土台(コア)が入っています。過去に受けた根の治療はレントゲンではそこまで悪くなさそうですが、根っこが少し曲がっていますね。これが前の歯科医院で「再治療が難しい」と言われた原因かもしれません。現時点でわかる範囲で申し上げると、問題なく根の治療をすることはできそうです。
そうなんですね!前の医院では、治療はできないと言われていたのでよかったです。
ただし、お伝えしておきたいことが二つあります。一つ目は、大きな土台が入っている場合、根の中でヒビ(クラック)が入っていることがよくあります。クラックがあると、根の中のヒビの部分から細菌が入り続けるため、根の治療の予後は悪くなります。もしクラックが根の中で見つかった場合、根の治療をしっかり治すという点ではかなり難しくなり、抜歯をするかどうかの検討が必要となります。
根の中が割れるなんてこともあるんですね。今の時点で割れているかどうかはわかるんでしょうか?
現在見える範囲では、顕微鏡で確認したところヒビは入っていなさそうです。ただ、根の内部のヒビについては、治療開始後にしか判断がつかないため、その点だけご了承ください。もう一つは、根管治療の成功率についてです。今回の状態で根の先の膿が治ってくれる確率は、おおよそ70%程度です。また、治療後には経過観察が必要ですが、根の先の問題が治ったかどうかの判定には、おおよそ半年から1年程度の期間が必要です。
わかりました。もし治ってない場合は、歯を抜くしか選択肢はないのでしょうか?
状況にもよりますが、通常の根の治療で治らない場合、次の治療法として外科的な方法があります。これは、歯茎をあけて根の先端部分を切除し、歯から悪い部分を直接取り除く方法です。もし外科治療が必要となった場合には、詳しくご説明する機会を設けさせていただければと思います。
わかりました。ありがとうございます。ぜひ、治療をお願いしたいと思います。
私も、なんとかこの歯が長持ちしてもらえるよう、しっかり治療していきます。よろしくお願いいたします。
監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医