症例紹介


背景と経過
かかりつけの歯科医院で「根の中が汚れている」という理由から、10回以上根管治療(薬の交換)を続けていた患者様です。腫れや違和感、膿が出る症状は改善せず、セカンドオピニオンで当院を受診されました。他県にお住まいのため、かなり遠方からのご来院でしたが、1回で根管治療を完了することができました。術後の痛みもなく、1年経過時には根の先の膿も完全に消失しており、良好な経過をたどっています。
①術前

咬頭が残り、対合の歯と噛み込んでいる状態でした。また、根管内には貼薬材料と思われる不透過像(白いモヤモヤ)が認められ、根尖部は黒い影が見え、骨吸収が認められる状態でした。
②ファイル試適

古い詰め物の下に虫歯が残っている可能性があるため、まずは完全に旧修復物を取り除き、新たにレジンで隔壁という壁を作成、ラバーダム防湿を行いました。根の中を次亜塩素酸ナトリウムとEDTAでしっかり洗浄し、ファイルという細い器具を使用し、根の先端部分までしっかりと清掃を行いました。
③コーンフィット

根管充填に使用するガッタパーチャを試適して、長さのエラーがないかの最終確認を行いました。ファイル試適をして意図した長さ通りの位置までガッタパーチャが到達していることがわかります。試適後、最終洗浄を行い、充填処置へと移行していきます。
④根管充填+コア築造

古い詰め物の下に虫歯が残っている可能性があるため、まずは完全に旧修復物を取り除き、新たにレジンで隔壁という壁を作成、ラバーダム防湿を行いました。根の中を次亜塩素酸ナトリウムとEDTAでしっかり洗浄し、ファイルという細い器具を使用し、根の先端部分までしっかりと清掃を行いました。
術後6ヶ月

治療完了後最初の来院ですが、すでに痛みや腫れ、膿は消失していました。
患者様は、「治療をして3日ほどで痛みはかなりマシになり、1週間ぐらいで腫れも消えた。今は全く気に
ならないぐらいになった」とおっしゃっていました。
根尖部分の透過像(黒い影)はまだ残存しているものの、「痛みも全くないので噛めるようにしたい」とのことで、
患者様の希望もあり、最終補綴(クラウン)へ移行していくことになりました。
術後12ヶ月

根の先の黒い影はほぼ縮小し、骨の再生が認められます。患者様の症状も全くなく、経過良好といえます。
術後24ヶ月


治療前は、根の先に黒い影があり骨の吸収が認められる状態でしたが、術後24ヶ月では完全に消失しています。
術後のレントゲンでは、“歯根膜(しこんまく)”という組織が、歯の周りを一層黒い線で取り囲んでいます。
歯根膜は正常な歯周組織に認められ、根尖の病変が治癒したことが確認できました。
症状もなく経過良好なため、フォローアップは終了となりました。
根管洗浄 | 次亜塩素酸ナトリウム溶液・EDTA溶液 |
根管貼薬 | 水酸化カルシウム |
拡大号数 | 50/04 |
根管充填 | バイオセラミックシーラーを用いたHydraulic condensation technique |
Drからのコメント
他の歯科医院にて、10回以上治療を続けていたが治らない、という主訴で来院された患者様でした。
今回の患者様のように、何度も薬の交換のために通院していたが治らず、当院を受診される患者様は非常に多い印象です。
クリニックの治療方針にもよりますが、基本的にしっかりとした環境下で根管治療を行えば、1回もしくは2回程度で治療は完了します。
今回の患者様も、治療後すぐに症状は軽減したとおっしゃっていたことから、ラバーダム防湿を行い、精密な治療を行う重要性を再認識できた症例でした。
関連記事①:根管治療の回数は、1回から2回程度で終わるのが理想的>>
治療詳細
主訴 | 歯ぐきが腫れて膿が出ている。治療に通っているがいつ治るのかわからない。 |
治療内容 | 右下小臼歯の精密根管治療 |
治療期間 | 1回 |
費用 | 143,000円(税込) |
リスク・副作用 | 根管治療後には、痛みや腫れが起こる可能性があります。 症状の軽減には数か月の期間が必要な場合があります。 根管治療を行った歯は、歯の破折(垂直性歯根破折)のリスクが高まります。 |
この患者様のセカンドオピニオン時のやりとりについては下記をご覧ください。
根管治療を10回以上受けても治らないため、専門医による治療を希望し来院した20代女性患者様|大阪の根管治療専門医による少ない回数での精密治療>>
監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医