背景と経過
来院3ヶ月前に、歯のズキズキした痛みのため根管治療を開始したものの、痛みが続いている患者様でした。何度か根管治療のために通院したものの痛みが軽減せず、むしろ強くなっているとのことでした。ご自身で調べたところ、ラバーダムが必要と知り、専門医による治療を希望して当院を受診されました。
症例紹介
初診来院時の状態

ご来院いただいた時点ですでに歯の神経治療が開始されており、深い虫歯も残存している状態でした。術前のレントゲン・CT画像にて、根の先に大きな黒い影が認めら、上顎洞の骨も吸収しており、上顎洞炎も併発している状態でした。
根管治療

すでに複数回根管治療を受けていましたが、虫歯が残存しており、根管内には強く細菌感染が起こっていることが疑われる状態でした。根管自体は単根歯で複雑な形態ではなかったため、1回で根管治療を完了しました。
極力治療した歯で噛まないようしたいただくことと、感覚が回復するのには最低でも6ヶ月程度の期間が必要であることをお伝えし、経過観察となりました。
根管洗浄 | 次亜塩素酸ナトリウム溶液・EDTA溶液 |
根管貼薬 | なし(1回で治療を終えたため) |
拡大号数 | 40/04 |
根管充填 | バイオセラミックシーラーを用いたHydraulic condensation technique |
6ヶ月後の経過観察

根管治療後6ヶ月のCT画像にて、元々失われていた骨が完全に再生していることが確認できました。
上顎洞の骨も回復し、上顎洞炎も消失し、良好な経過を辿っています。
Drからのコメント
元々他院で治療を開始したものの、ラバーダムが使用されておらず、痛みが続いている患者様でした。このようなケースの場合、まずは以下の3点を確認しています。
①虫歯が残っていないか?(虫歯は完全除去が必要)
②反対の歯と噛んであたっていないか?(臼歯では噛まない方がよい)
③クラックはないか?(割れていると保存は難しい)
虫歯が残存しており、反対側の歯とも一部噛み込んでいたため、まずは噛み合わせを落として虫歯の除去を行いました。根管形態そのものは比較的シンプルな形態であったため、1回で治療は完了しました。
術後、ひびく感じが強くあるのとのことでしたが、6ヶ月経過時点では軽減し、レントゲン・CTでも骨の回復が認められました。
今後はクラウンによる補綴治療に移行していきます。
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治療詳細
主訴 | ラバーダムなしで根管治療を受けており痛みが続いている |
治療内容 | 上顎小臼歯の精密根管治療 |
治療期間 | 1回 |
費用 | 根管治療143,000円(税込) |
リスク・副作用 | 根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。 |
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この患者様の実際の動画:
監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医