ご来院までの背景
5年前に、上顎右側2番(側切歯)の歯根端切除術を受けられた患者様でした。口腔外科で外科的歯内療法(歯根端切除術)を受けたものの、半年前から歯肉の腫れが出現し、かかりつけへ相談したところ、「すでに一度治療を受けているので抜歯するしかない」と説明を受けられました。可能であれば歯根端切除術の再治療を受けたいとのことで、来院されました。

実際のやりとり
はじめまして。髙井です、よろしくお願いいたします。右上の前歯の治療のご希望とのことですね。ありがとうございます。まずお話から伺わせていただきたいと思います。
右上の前歯は、はじめは10年以上前に根管治療を受けました。その後、腫れや痛みがひいたので、セラミックの被せ物を装着しました。しかし、5年ほどたったときに、根の先に膿が出たたため相談すると、「歯ぐきを切って根の先の膿を取り除く方法が必要」と言われ、近くの市民病院の口腔外科で、根の外科治療を受けました。
そうだったのですね。それからは特に症状はなかったのでしょうか。
外科治療後、膿は消えて問題なく過ごせていました。ただ、半年ほど前からまた前歯の膿や腫れが出てきました。かかりつけの先生に相談すると、「もう根の先の外科を一度しているので、これで治っていないということは抜歯するしかない」と説明を受けました。前歯なので、もし抜歯になるとブリッジかインプラントになるようなのですが、どちらも避けたいと思っており、まだ歯を残せるのではないかと期待し、髙井歯科クリニックを受診いたしました。
わかりました。ありがとうございます。それでは、一度お口の中を拝見し、レントゲン写真、CT画像も確認いたします。
(口腔内の検査・レントゲンの確認)
お疲れ様でした。現時点での結果ですが、再度外科治療をすることはできると思います。
そうなんですね!よかったです。なんとか歯を抜くのは避けたいので、よかったです。ちなみに、外科治療じゃなくセラミックをはずして根の治療をすることはできないのでしょうか。
できれば外科処置は避けたいことと思います。ただ、現在の⚫️⚫️様の右上の歯には、非常に奥深くまで金属の芯の棒が入っている状態です。通常の根管治療をする際には、土台の金属も外す必要があるのですが、あまりに深く入っている場合、土台を外す際に歯そのものが破折してしまうリスクがあります。現在の状態であれば、通常の根の治療をしようとすると、ほぼ間違いなく歯が割れてしまうかと思います。そのため、歯ぐきを開いて根の先端部分を切除する、歯根端切除術の適応であるかと思います。
わかりました。再度外科治療をすることはできるのでしょうか。また、前にやった治療をもう一回やって、治ってくれるのでしょうか。
今の根の先を見ると、およそ3mmほど切除されており、レントゲン的には受けた処置に大きな問題はないように思えます。しかし、実際には切断面を顕微鏡で精査したり、逆から綺麗に清掃して材料で封鎖したり、顕微鏡環境下でないとできない細かな処置がたくさんあります。口腔外科でおそらく根の先を切る処置は受けらていますが、細部にわたる処置をどこまで受けられているかまではわかりません。そのあたりをしっかりと再度行うことで、治癒してくれる可能性は十分にあると思います。
どこでやっても同じではないということなんですね。よくわかりました。
ただ、もしも歯ぐきを開けてみて、歯の根にヒビが入っている場合、基本的には治療はうまくいかず、最終的には抜歯となる可能性が高いといえます。そのため、「歯ぐきを開けてみてヒビが入っていれば、治療は中断し、抜歯を検討」されるのがよいかと思います。ヒビが入っていなければ、治る可能性は高いと考えていただいて大丈夫でしょう。
わかりました。ありがとうございます。ぜひ治療を受けたいと思います。よろしくお願いいたします。
わかりました。前歯は特に審美的にも大切なところですので、なんとか歯をそのまま残せるよう、しっかり準備して精一杯取り組んでいきます。よろしくお願いいたします。
この患者様の実際の治療内容・治療経過については下記をご覧ください。
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監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医