前歯 歯を残したい 症例紹介

背景と経過

他院にて、歯の神経が死んでしまっているため根管治療が必要と言われた患者様です。歯ぐきの腫れと膿が認められる状態でしたが、前医では「どの歯かなかなか確定できない」とも説明されたとのことでした。
過去の歯科医院でのトラウマから、治療に対する不安が非常に強いため、何とかできないだろうかと当院へご相談に来られました。特に、ラバーダムの圧迫感を心配されておりましたが、根管治療をしっかりと行うためには、ラバーダムは必要であることもご理解されていました。
患者様とご相談した結果、歯科麻酔の専門医の先生に来てもらい、静脈内鎮静(じょうみゃくないちんせい)という、眠った状態で治療を受けるプランをご提案し、鎮静状態で1回で治療を終える方法で進めていくことになりました。

症例紹介

術前の所見

口腔内を確認したところ、左上前歯の根の先あたりの歯ぐきの軽度の腫れが認められました。
歯ぐきを押すと鈍い痛みがあり、神経の反応をみる検査では反応がなく、神経は完全に死んでしまっている状態(歯髄壊死)であると診断しました。
通常のレントゲン写真では根の先の状態は不明瞭でした。おそらく、前医では、神経の検査を的確に行うことが難しかったことと、レントゲンでは根の先の状態の判断に迷ったため、患歯(どの歯が原因か)が断定できなかったと推測されます。
CTを撮影したところ、根の先にはっきりと黒い影(膿・骨の吸収像)が認められ、臨床検査、レントゲン検査から、左上の前歯が原因と確定しました。
根の中への細菌感染の経路は、おそらく古い詰め物の隙間から虫歯が進行し、そこから歯の内部へ感染が進んだものと推測されました。

来院〜問診〜鎮静開始:所要時間約20分

まず、麻酔科の先生と全身状態などの詳しい問診を行います。事前に問診票を記入していただいていましたが、全身的な既往歴や服用中の薬剤などについて、より詳しくヒアリングします。
その後、血圧やSpO2を測定し、術後の注意事項などもご説明した上で、ごく細い注射針を使用して腕の血管から鎮静(眠る)薬をゆっくりと注入します。
来院して椅子に座っていただいてから実際に眠るまでは概ね15分程度でした。

局所麻酔〜根管治療開始〜治療終了:所要時間約50分

歯科治療で使用する歯ぐきに対する通常の麻酔(局所麻酔)も、眠ったことを確認してから行います。麻酔後、まずは古い詰め物と虫歯を取り除き、レジンで虫歯だった部分を修復しました。その後、ラバーダムを装着し、根管治療を開始しました。1根管のみの比較的シンプルなケースであったため、ラバーダム装着後、45分程度で治療は終了しました。

根管洗浄次亜塩素酸ナトリウム溶液・EDTA溶液
根管貼薬なし(1回で治療を終えたため)
拡大号数50/04
根管充填バイオセラミックシーラーを用いたHydraulic condensation technique

鎮静からの覚醒〜お会計〜ご帰宅:所要時間約20分

治療終了のタイミングで、麻酔から覚醒する薬剤を使用し、すぐに目覚められました。その後、麻酔科の先生から術後の注意事項のご説明、院長から根管治療後のご説明をし、処置はすべて完了しました。
クリニックに来院してからご帰宅まで、およそ90分程度で1回で治療を終えることができました。
次回の来院は、6ヶ月後のフォローアップとなります。

眠った状態で根管治療を受けている様子

鎮静中は、常に歯科麻酔専門医のドクターが患者様の状態を把握しています。
具体的には、酸素の吸入、血圧や酸素飽和度のモニタリング、さらには術中のあらゆる事態に備えた薬剤の準備など、万全の体制で治療に臨んでいます。
また、髙井歯科クリニックが依頼している歯科麻酔専門医は、大阪大学の歯科麻酔学講座で長年経験を積み、現在はフリーランスの麻酔科医として活躍している非常に経験豊富なドクターであり、院長とも長年多くの症例を共有しています。

治療後の患者様のご感想

「治療前は、本当に緊張して不安でした。ただ、麻酔の先生も丁寧にお話を聞いてくださり、横になっていざ処置が始まるとあっという間に眠っていました。治療中のことは全く覚えておらず、記憶にありません。本当にあっという間という感じです。多分、鎮静をお願いしていなかったら、治療中もきっと不安で耐えなければいけなかったと思います。今回お願いして本当に良かったです。ありがとうございました。」

Drからのコメント

患者様にとって、歯科治療はとても不安が大きい治療だと思います。特に根管治療は、通常の歯科治療以上に細かな処置であり、一定時間ラバーダムを装着して治療を続ける必要があります。過去の経験やトラウマから、歯科治療への不安がとても強い患者様にとって、静脈内鎮静は楽に治療を受けることができるとてもよい方法だと考えています。

治療詳細

主訴静脈内鎮静下での根管治療を希望
治療内容上顎前歯の精密根管治療
治療期間1回
費用根管治療132,000円+鎮静費用88,000円(税込)
リスク・副作用根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。

この患者様のセカンドオピニオン時のやりとりについては下記をご覧ください。

監修者情報

院長 髙井 駿佑

経歴

  • 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
  • 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
  • 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
  • 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
  • 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
  • 2023年 髙井歯科クリニック 開院

資格

  • 日本歯内療法学会 専門医
  • 米国歯内療法学会 会員
  • 日本外傷歯学会 認定医
clinic

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