目次
背景と経過
歯が浮いた感じがありかかりつけの歯科医院でみてもらったところ、「歯に穴があいている」「根管治療ができない」「歯が折れている」「抜歯するしかない」と説明を受けた患者様です。レントゲンでの検査結果からは非常にシビアな状態でした。口腔内からの精査では明らかな破折線は認められなかったことから、通常の根管治療ではなく、意図的再植術を行い、口腔外からパーフォレーション(穿孔:穴があいている部位)の封鎖も行うことになりました。
この患者様のセカンドオピニオン時のやりとりについては下記をご覧ください。
根管治療ができないと言われた歯の治療 40代女性患者様|意図的再植術によるパーフォレーションリペア
症例紹介
初診来院時の状態


右上5番は、デンタル、CTにおいて、明らかなパーフォレーション(穿孔)が認められました。パーフォレーションとは、本来の根管とは異なる方向へ穴が空いてしまう偶発症です。
オリジナルの根管へのアクセスは難しく、根管内部からのパーフォレーションの封鎖は困難であると判断し、意図的再植術によって治療を行うことになりました。
意図的再植術



意図的再植術を行うために、丁寧に抜歯を行い、根の先端を切除、破折が起こっていないか色素で染め出しをして確認しました。破折がなかったため、根の先と穿孔部を逆方向から清掃し、MTAセメントを充填、抜歯窩に戻して終了となりました。
治療時間は麻酔〜抜歯まで約15分、口腔外での処置が約10分、抜歯窩に戻して術後のご説明などで10分程度で終了しました。
意図的再植術後の流れ
2週間後 経過観察のため来院
意図的再植術後には、対合(今回であれば下の歯)と当たらないような状態で治療を終えていますが、稀に日常生活の間に飛び出てしまい噛み込んでいる場合があります。そのような場合には咬合調整を行いますが、今回のケースでは問題なく経過していました。
6ヶ月後 経過観察のため来院
根の問題の治癒のひとつの目安は6ヶ月に設定しています。これは、治るのに一定の時間がかかるためです。6ヶ月後に歯の状態のチェック、レントゲンによる根の先の治癒を確認します。
6ヶ月後の経過観察

術後6ヶ月が経過し、はっきりと骨の回復が認められました。
治療直後は揺れていた歯も、ほとんど動揺がなくなり安定した状態となっています。
経過良好と判断し、最終補綴(クラウン)を作製・装着し、治療は完了となりました。
今回の治療のポイント
レントゲンでの黒い部位=骨の吸収が起こっている部位

一般的に、レントゲンで歯の周りを取り囲む骨の吸収は、歯根破折が疑われます。口腔内からの精査でわかる場合もありますが、根の先で起こっている破折の多くはわかりません。
今回のような意図的再植術は、抜歯をして歯の破折を全周くまなくチェックできるという利点があります。
破折が疑われる状態でしたが直接精査して破折はなかったため、治療を継続し、良好な状態を維持しています。
また、パーフォレーションも根管内からの封鎖が可能な場合もありますが、今回のようにサイズが大きくアクセスがしにくい部位の場合、意図的再植術によって直接封鎖することは非常に有効といえます。
治療詳細
| 主訴 | 根管治療ができないと言われたが治したい |
| 治療内容 | 小臼歯の意図的再植術 |
| 治療期間 | 1回 |
| 費用 | 176,000円(税込) |
| リスク・副作用 | 外科的歯内療法は、術後の痛みや腫れ、歯肉の退縮などの副作用があります。また、治療は100%成功することを保証できるものではありません。抜歯後に確認し、歯にヒビが入っている場合は治療の継続は困難であり、抜歯の適応となります。 |
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執筆・監修者情報 髙井歯科クリニック 院長 髙井 駿佑Shunsuke Takai 根管治療(歯の神経の治療)を専門とし、マイクロスコープとラバーダム防湿を用いた精密根管治療を2,000件以上担当。大阪大学歯学部附属病院での研修後、医療法人晴和会うしくぼ歯科で副院長を務め、2023年に髙井歯科クリニックを開院。日本歯内療法学会専門医として、歯科医師向けセミナーの講師や専門誌・書籍の執筆も行っています。 経歴 資格 本記事は、髙井歯科クリニック 院長・髙井 駿佑(日本歯内療法学会 専門医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表・論文等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。



