目次
背景と経過
かかりつけ歯科医院にて、2年前に前歯にセラミッククラウンを装着した患者様です。その後、歯茎の腫れが起こり、レントゲンで根の先の膿(黒い影)が指摘されました。通常であれば、クラウンを除去しての根管治療が第一選択になりますが、患者様は「せっかく入れたクラウンを外したくない」「裏側から穴をあけるのも抵抗がある」とのことで、外科的歯内療法(歯根端切除術)による治療の適応でした。より専門性の高い治療を希望されたため、かかりつけ歯科医院から当院をご紹介いただきました。
この患者さんのセカンドオピニオンはこちらをご覧ください:
>>セラミックを入れた歯なので根管治療ができない 50代女性患者様|前歯の歯根端切除術
症例紹介
初診来院時の状態

上顎左側1番には、セラミッククラウンが装着されていました。来院時には顕著な歯茎の腫れは認められなかったものの、レントゲンにてはっきりと根の先の黒い影が認められました。患者様とご相談した結果、歯根端切除術により治療を行うことになりました。
歯根端切除術

通法通り、局所麻酔を行い、歯肉の切開剥離から開始しました。
麻酔が奏功しているため、切開から治療終了まで、痛みを感じることは全くなかったとのことでした。
歯肉切開後、感染している根尖約3mmを切除し(根尖切除)、切除した部位から根管内を3mm程度清掃し(逆根管形成)、MTAセメントで封鎖(逆根管充填)を行いました。
治療時間は、切開から縫合終了までおよそ30分程度と比較的スムーズに処置が進みました。
治療終了後

外科治療中は多少の出血はあるものの、終了時には出血はほぼ止まっていました。
麻酔が効いていたため、治療中に痛みは全くなかったとのことで、1〜2週間後に抜糸となりました。
経過観察-CT画像-

治療直後は根の先に大きく穴が空いているため、CT画像では根尖部が黒く写っています(左図)。
その後6ヶ月が経過し、根尖部は白く写っており、骨が回復していることを示しています(右図)。
経過観察-口腔内写真-



今回は、治療後の歯肉の退縮や瘢痕はほとんど認められませんでした。
ただし、歯肉の切開後必ずしもこのように完全に綺麗に元の位置に戻ることは少なく、多少歯肉の退縮が起こることが多いといえます。
外科治療後歯肉が“下がりやすい”特徴
- 段差や隙間がある被せ物や詰め物が入っている
- 磨き残しが多く歯茎が腫れている
- 元々の歯肉が薄い
- 歯ブラシを過度な力で当てすぎている
上記に該当する場合、より大きく歯肉が退縮する可能性があります。
逆に、日々の口腔内のケアが良好で、修復物が入っていない(あるいは適合がよいセラミック)場合、歯肉退縮量はそこまで大きくないといえます。
患者様のご感想
治療を受けるまでずっと腫れて痛かったのですが、セラミックをはずさずに、痛みもなくなり、外科治療を受けてとっても快適に過ごせるようになりました。
歯茎を切ると聞いていたので痛みを心配していましたが、治療中は全く痛くなく、治療後も大した痛みや腫れはありませんでした。
難しい治療と前の先生から聞いていたのですが、こちらで専門の先生に見てもらって本当によかったです。ありがとうございました。
Drからのコメント
歯根端切除術は、根管治療の延長にある外科治療です。
歯茎を開いて根の先を切るだけの処置は行なっている歯科医院もありますが、顕微鏡を使い、根の先の処置を正確に行うには、「治すために必要な」知識や技術、そして多くのトレーニングが必要です。
外科治療は患者様にとっても私たち歯科医師にとっても、何度も繰り返して行う治療ではありません。だからこそ、一度の治療でしっかりと“治しきる”ことが大切だと考えています。
外科的歯内療法(歯根端切除術)の成功率は、およそ90%です。つまり、歯が割れているなどの問題がなければ、その多くは外科治療によって解決するといえます。
治療詳細
| 主訴 | セラミックが入っている前歯の根の治療が必要になった |
| 治療内容 | 前歯の歯根端切除術 |
| 治療期間 | 1回 |
| 費用 | 165,000円(税込) |
| リスク・副作用 | 外科的歯内療法は、術後の痛みや腫れ、歯肉の退縮などの副作用があります。また、治療は100%成功することを保証できるものではありません。 |
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執筆・監修者情報 髙井歯科クリニック 院長 髙井 駿佑Shunsuke Takai 根管治療(歯の神経の治療)を専門とし、マイクロスコープとラバーダム防湿を用いた精密根管治療を2,000件以上担当。大阪大学歯学部附属病院での研修後、医療法人晴和会うしくぼ歯科で副院長を務め、2023年に髙井歯科クリニックを開院。日本歯内療法学会専門医として、歯科医師向けセミナーの講師や専門誌・書籍の執筆も行っています。 経歴 資格 本記事は、髙井歯科クリニック 院長・髙井 駿佑(日本歯内療法学会 専門医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表・論文等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。



