ご来院までの背景
かかりつけ歯科医院にて、大きな虫歯があるとのことで根管治療を開始していた患者様です。担当医より、「簡単な根の治療だからラバーダムも必要ない」と説明を受けたとのことでした。元々あまり痛みがなかった歯でしたが、治療を重ねるごとに痛みが強くなり、当院を受診される時には非常に強い痛みがある状態でした。患者様は、自身で調べたところラバーダムの必要性について知り、当院を受診されました。

実際のやりとり
こんにちは。高井です。よろしくお願いいたします。今現在治療を受けている最中であると伺っていますが、どのような状態でしょうか。
はい。1ヶ月ほど前に歯に穴があいたため、かかりつけの歯科医院を受診しました。歯の神経まで達しているので神経を抜く治療が必要と言われ、根の治療を行いました。初めはそこまで痛みはなかったのですが、回数を重ねるごとに痛みが強くなり、今現在は痛み止めを常に飲んでいるような状態です。
全く知識がなかったので、根管治療について調べたら、ラバーダムというのが大切と知りました。担当の先生に聞いたみたところ、「根っこが1本で簡単な治療だからラバーダムは必要ない」と言われ、大丈夫なのかと不安に思い、根の治療を専門とされている髙井歯科さんで治療を受けたいと思い、来させていただきました。
ありがとうございます。⚫️⚫️様がご不安に感じておられる通り、ラバーダムは根管治療を行う時には必須と考えていただいてよいと思います。根管治療では、根の中の細菌を減らすことが治療の最大の目的です。根の中を綺麗にしたい根管治療中に、歯の中に唾液が入り込むと、新たな感染を引き起こすことにつながります。確かに根の形自体は比較的シンプルな1根管ではありますが、だからといってラバーダムを使わなくてもよいということにはなりません。
やっぱりそうだったのですね。痛みがどんどん強くなってきているのも、ラバーダムを使っていないことが原因でしょうか。
その可能性は十分に考えられます。中を綺麗にしたい一方で、細菌が入り込むという環境は、根管治療にとってはあまり望ましいとはいえません。ただし、ラバーダムを使ったら絶対に治る、あるいはラバーダムを使わないと絶対に治らない、とも言い切れません。
今からラバーダムを使ってしっかりとした治療をしても間に合うのでしょうか。
はい。現時点ではここから改善し治癒にもっていくことができる可能性は十分にあります。拝見したところ、過剰に歯が削られている様子もなく、比較的治りやすい状態であるといえます。ただし、ラバーダムがない状態で感染が起こり、痛みがある場合、症状が軽減するのに時間がかかる可能性はあります。
わかりました。ありがとうございます。痛みが引くのにどれぐらいみておけばよいでしょうか。
今回の状況に当てはめてというより、根管治療全般に言えることですが、まず、治療直後の数日から1週間程度は、軽度の鈍い痛みや歯茎の腫れなどが出る可能性があります。おおよそ半数の方に症状が出ますが、ほとんどは痛み止めを服用していただき十分コントロールが可能なレベルです。
一方で、治療を受けてから中長期かけて引いてくる痛みもあります。特に術前に痛みが強い場合、概ね3〜6ヶ月程度、症状の軽減に時間がかかる場合があります。また、レントゲン的に見て、根管治療がうまくいっているかどうかの判定にも最低で6ヶ月、基本は1年程度の時間が必要です。そのため、「治療を受けてから半年ぐらいは様子見が必要で、すぐにうまくいっているかどうかはわからない」とお考えいただければと思います。
ありがとうございます。よくわかりました。
治療をお願いしたいと思っていますが、次回の治療までこのままでよいでしょうか。
もうすでにラバーダムなしで治療を受けられているので、緊急で何かやればおさまるというわけではありません。仮蓋だけしっかりと行い、あまり硬いものを噛まないようにしてください。また、わざと爪や指で歯を押さえたりしないようにしましょう。痛みに対してどんどん過敏になり、治療後に治らない原因となります。
根管治療は何回ぐらいかかりますか?
基本的には、根管治療は1回で完了することがほとんどです。ラバーダムを装着してマイクロスコープを使い、歯の内部の清掃をしっかりと行えば、あとは封鎖して治るのを待つだけ、と思っていただければと思います。
1回で終わるんですね。仕事の都合などもあるので、とても助かります。
ぜひよろしくお願いいたします。
次回治療までの間に痛みが強い場合、痛み止めを服用していただいてかまいません。
それでは、次回からしっかりと治療していきますので、よろしくお願いします。
この患者様の実際の症例はこちらをご覧ください:
ラバーダムは“いらない”と言われ根管治療を受けている【30代女性】根管治療におけるラバーダム防湿の重要性_症例65
関連記事
執筆・監修者情報 髙井歯科クリニック 院長 髙井 駿佑Shunsuke Takai 根管治療(歯の神経の治療)を専門とし、マイクロスコープとラバーダム防湿を用いた精密根管治療を2,000件以上担当。大阪大学歯学部附属病院での研修後、医療法人晴和会うしくぼ歯科で副院長を務め、2023年に髙井歯科クリニックを開院。日本歯内療法学会専門医として、歯科医師向けセミナーの講師や専門誌・書籍の執筆も行っています。 経歴 資格 本記事は、髙井歯科クリニック 院長・髙井 駿佑(日本歯内療法学会 専門医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表・論文等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。


