背景と経過
1ヶ月前に、「大きな虫歯がある」とのことで他院で根管治療を開始した患者様です。元々あまり痛みはなかったとのことでしたが、治療後どんどん痛みが強くなり、当院を受診した時には非常に強い痛みがある状態でした。患者様に伺ったところ、前医では「簡単な根の形なのでラバーダムは必要ない」と言われ、ラバーダム防湿は行われておらず、さらに虫歯が残っている状態でした。ラバーダムの使用による無菌的な治療を希望し、当院を受診されました。治療は1回で完了し、その直後から痛みは消失、術後6ヶ月で良好な状態を維持しています。
この患者様のセカンドオピニオンの際のやり取りについては、こちらをご覧ください:
>>簡単な根管治療なのでラバーダムは”いらない”と言われた 30代女性患者様|根管治療における無菌的治療の重要性
症例紹介
初診来院時の状態

初診来院時の状態です。他院で根管治療が行われており、歯には虫歯が残っている状態でした。
ラバーダムも使用されていなかったことから、新たな細菌感染が起こり、それが痛みを引き起こしている可能性が高いと考えられました。
根管治療の前処置

根管治療の前処置として、虫歯を取り除き、レジンによる隔壁を作製します。
隔壁の目的は、ラバーダムを装着する土台の作製、薬液の漏出防止、仮封材の維持などが挙げられます。
精密根管治療

左図:治療開始前の状態。
中図:根管治療中の状態。根尖付近まで十分な清掃が行えており、器具の到達度を確認しました。
右図:根管充填後の状態。緊密な封鎖が得られ、問題なく治療は完了しました。
| 根管洗浄 | 次亜塩素酸ナトリウム溶液・EDTA溶液 |
| 根管貼薬 | なし(1回で治療完了のため) |
| 拡大号数 | #60/02 |
| 根管充填 | バイオセラミックシーラーを用いたシングルポイント法 |
経過観察

治療直後に痛みは消えて快適に過ごせているとのことでした。術後6ヶ月の来院時のレントゲン画像でも、根の先の状態に問題はなく、良好な経過をたどっています。
患者様のご感想
今回、治療を始めた時はそこまで痛みはなく、前の先生からも「簡単だからラバーダムは必要ない」と言われていました。しかし、その後すごく強い痛みが出始めた時に、「もしかしたら治療がうまくいっていないのかもしれない」と思い、自分で調べた時に初めてラバーダムやマイクロスコープについて知りました。
自費診療ということもあり、こちらでお願いしようかどうか迷ったこともありましたが、痛みをなんとかしたいという点と、歯をちゃんと治療してもらって残したいという点から、治療を受けることを決めました。
治療後は、これまでの痛みが嘘のように楽になり、治療を受けて本当によかったです。ありがとうございました。
Drからのコメント
本ケースは、根管自体はシンプルな1根管のため、難易度としてはそこまで高くはありません。しかし、それはラバーダムやマイクロスコープの使用、虫歯の除去といった、適切な根管治療を行うための条件がきちんと整っていることが前提です。根管が簡単だからといって、ラバーダムがなくてよい、虫歯が残っていてもよいということは決してありません。
治療詳細
| 主訴 | ラバーダムが“いらない”と言われた |
| 治療内容 | 小臼歯の精密根管治療 |
| 治療期間 | 1回 |
| 費用 | 176,000円 |
| リスク・副作用 | 根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。 |
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執筆・監修者情報 髙井歯科クリニック 院長 髙井 駿佑Shunsuke Takai 根管治療(歯の神経の治療)を専門とし、マイクロスコープとラバーダム防湿を用いた精密根管治療を2,000件以上担当。大阪大学歯学部附属病院での研修後、医療法人晴和会うしくぼ歯科で副院長を務め、2023年に髙井歯科クリニックを開院。日本歯内療法学会専門医として、歯科医師向けセミナーの講師や専門誌・書籍の執筆も行っています。 経歴 資格 本記事は、髙井歯科クリニック 院長・髙井 駿佑(日本歯内療法学会 専門医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表・論文等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。



