背景と経過
虫歯が深くズキズキ痛みがあったため近くのかかりつけ歯科を受診したところ、根っこが大きく曲がっていて非常に難しいと説明を受け、当院を受診されました。来院時にはすでに痛みは消失しており、歯髄壊死の状態と診断しました。根の湾曲は強かったため、ファイル破折を起こさないよう慎重に治療をすすめ、問題なく根管治療を終えることができました。
症例紹介


処置中

処置中も、ファイル(細い針金状の器具)を試適した状態でレントゲンを撮影し、器具を挿入する長さのエラーが起こっていないか、湾曲の程度はどれぐらいかなどを確認します。

治療中は、根の中の細菌を減らすために、さまざまな器具、材料を使用します。
▼左図:根管洗浄
次亜塩素酸ナトリウム溶液という抗菌性のある薬液で、根管内の細菌に対して洗浄を行います。
▼中図:根管充填
綺麗にした根の中、ガッタパーチャというゴム状の材料と、バイオセラミックシーラーという最新の材料を用いて、封鎖します。
▼右図:コア築造
根管治療のための穴(アクセスキャビティ)を、レジン材料で封鎖をし、細菌の侵入を防ぎます。
Drからのコメント
根っこが曲がっている歯のことを、湾曲根管(わんきょくこんかん)といい、難易度が高い根管治療のひとつといえます。ただ、今回の歯は湾曲の程度は強いものの、フックのような急激なカーブではないため、慎重に進めることで問題なく治療を終えることができました。
来院時には痛みの症状も消失していたため、1回で治療を終える方法を採用し、治療を行いました。
患者様は、根管治療は数ヶ月間毎週通わないといけないと思っていた様子で驚かれていましたが、条件が整えば1回で治療を終えることができます。
根管治療にかかる回数の詳細については、下記の記事をご覧ください。
関連記事:根管治療の回数は、1回から2回程度で終わるのが理想的>>
治療詳細
主訴 | 歯の根が大きく曲がっているため難しいと言われた |
治療内容 | 左上小臼歯の精密根管治療 |
治療期間 | 1回 |
費用 | 143,000円(税込) |
リスク・副作用 | 根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。 |
監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医