背景と経過
左下奥歯が揺れはじめため近くの歯科医院へ相談したところ、根の先の膿が大きいため、「根管治療をしても治らない」「抜歯した方がいい」と説明を受けた患者様です。初診来院時にCTを撮影したところ、10mmを超える大きな骨の吸収が認められました。しかし、歯そのものは比較的しっかりしている状態であり、根管治療で治る可能性があること、そして治らなければ意図的再植術を行い対応可能であることをご説明し、根管治療を行いました。治療から12ヶ月で根の先の膿はほとんどなくなり、非常に大きかった骨の吸収も大部分が回復しました。
症例紹介
初診来院時の状態

左下7番はメタルクラウンが装着されており、歯の周りの骨の広範囲の吸収が確認できました。しかし、根管内部は未処置の部位が残っており、細菌をさらに減らすことができる“余地”がある状態でした。
精密根管治療

治療開始時に古い修復物を除去し精査したところ、歯の内部のクラック(ヒビ)はなかったため、根管治療を行いました。治療は1回で完了し、その後6ヶ月〜12ヶ月の経過観察となりました。
| 根管洗浄 | 次亜塩素酸ナトリウム溶液・EDTA溶液 |
|---|---|
| 根管貼薬 | なし |
| 拡大号数 | #60/02 |
| 根管充填 | バイオセラミックシーラーを用いたHydraulic condensation technique |
経過観察



根管治療前後の比較


1回の根管治療のみで、非常に大きな骨吸収が改善し、骨の再生が認められました。
当初は抜歯と言われていましたが、現在の状況であれば被せ物を装着し、今後も良好な予後が期待できます。
(黒い領域=骨が溶けている部位 / 白い部分=骨がある部位)
患者様のご感想
元々CTを見せてもらっていましたが、素人の私が見ても明らかに悪そうな状態でした。ただ、なんとか残せるなら残したいと思いこちらをご紹介していただきましたが、無事に治していただいて本当によかったです。噛む力が強いので今後歯が割れたりしないか心配ですが、できるだけ硬いものを噛まないように気をつけながら、この歯を大事にしたいと思います。
Drからのコメント
術前の状態では非常に大きな骨の吸収がありましたが、根管治療ができないという状態ではありませんでした。そのため、通常通り精密な根管治療を行いました。治療自体は1回で完了し、術後12ヶ月が経過した時点で骨の吸収は大きく回復し、ほとんど健全な状態に戻っていました。
患者様にも、「あの時抜歯せずにこちらに来る選択をしてよかった」とおっしゃっていただき、治療を受ける決断をしていただき良かったと感じています。
今回の病変は我々が見ても非常に大きく、やや予後に不安はありましたが、病変の大きさで抜歯かどうか決まるわけではないということを示してくれた治療でした。
治療詳細
| 主訴 | 根管治療をしても治らないと言われた |
| 治療内容 | 下顎大臼歯の精密根管治療 |
| 治療期間 | 1回 |
| 費用 | 187,000円(税込) |
| リスク・副作用 | 根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。 |
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執筆・監修者情報 髙井歯科クリニック 院長 髙井 駿佑Shunsuke Takai 根管治療(歯の神経の治療)を専門とし、マイクロスコープとラバーダム防湿を用いた精密根管治療を2,000件以上担当。大阪大学歯学部附属病院での研修後、医療法人晴和会うしくぼ歯科で副院長を務め、2023年に髙井歯科クリニックを開院。日本歯内療法学会専門医として、歯科医師向けセミナーの講師や専門誌・書籍の執筆も行っています。 経歴 資格 本記事は、髙井歯科クリニック 院長・髙井 駿佑(日本歯内療法学会 専門医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表・論文等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。



