背景と経過
前歯の歯茎からフィステル(膿)ができているとの主訴で来院された患者様です。近くの歯科医院で一度見てもらったものの、レントゲンでは膿のような黒い影は見えず、様子を見ましょうと言われたとのことでした。専門的な診断と治療を希望し、当院を受診されました。
症例紹介
初診来院時の状態

上顎前歯にはフィステルがある状態でしたが、通常のレントゲン写真(デンタルエックス線写真)では、根の先の状態ははっきりとはしませんでした。CTを撮影したところ、明確な黒い影が認められ、また歯髄検査に反応もしませんでした。歯の神経は完全に壊死していると判断し、根管治療を行うことになりました。
根管治療

根管はスタンダードな1根管形態であり、1回の治療で根管充填まで行いました。
| 根管洗浄 | 次亜塩素酸ナトリウム溶液・EDTA溶液 |
|---|---|
| 根管貼薬 | なし |
| 拡大号数 | #60/02 |
| 根管充填 | バイオセラミックシーラーを用いたHydraulic condensation technique |
根管治療後1年の状態

根管治療から1年が経過し、腫れや鈍痛などの症状はなくなり、良好な状態です。
通常、根の先の膿(根尖性歯周炎)は根の先端部分(黄色矢印)に起こりますが、今回の歯はそれに加え、側方部分(オレンジ矢印)にも見られました。これは、根の先端部分の枝分かれ(側枝)が存在しており、その部分から感染が広がり側方の骨の吸収が起こっていたと考えられます。
患者様のご感想
前歯にフィステルができてから色々と自分で調べ、根管治療は難しい治療であり、特に最初の治療が重要だと知りました。治療を受けるなら専門の先生にお願いしようと思っていましたが、本当に治療が必要なのかも含め相談させていただきました。結果として根管治療が必要となりましたが、治療から1年が過ぎ、問題なく快適に過ごせています。フィステルも消え、心配していたラバーダムも問題なく、髙井歯科クリニックさんに根管治療をお願いしてよかったです。
Drからのコメント
通常のレントゲン写真では、根の先の状態は把握が難しいことも少なくありません。当院では、すべてのケースでCTを撮影し、根の先の状態を詳しく精査しています。今回のように、判断が難しい場合でも、CTによって高い精度で診断を行うことができます。
治療自体はスタンダードな方法で行いましたが、側枝に病変が認められたことから、高いレベルでの根管内の細菌減少が必要でした。無事に根の先は治癒し、問題なく経過していて安心しました。
治療詳細
| 主訴 | 上の前歯のフィステルを治したい |
| 治療内容 | 上顎前歯の精密根管治療 |
| 治療期間 | 1回 |
| 費用 | 165,000円(税込) |
| リスク・副作用 | 根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。 |
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執筆・監修者情報 髙井歯科クリニック 院長 髙井 駿佑Shunsuke Takai 根管治療(歯の神経の治療)を専門とし、マイクロスコープとラバーダム防湿を用いた精密根管治療を2,000件以上担当。大阪大学歯学部附属病院での研修後、医療法人晴和会うしくぼ歯科で副院長を務め、2023年に髙井歯科クリニックを開院。日本歯内療法学会専門医として、歯科医師向けセミナーの講師や専門誌・書籍の執筆も行っています。 経歴 資格 本記事は、髙井歯科クリニック 院長・髙井 駿佑(日本歯内療法学会 専門医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表・論文等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。




