
『根管治療を受けたのに、痛みがまったく引かない』
『治療した歯の歯茎が腫れて、膿が出てくる』
『何度も通っているのに、いつまで経っても終わる気配がない』
根管治療を受けたあと、このようなお悩みを抱えて情報を探されている方は少なくありません。根管治療が治らない原因はひとつではなく、歯科医師側の処置や治療環境によって防げるものと、歯そのものの状態によって防ぎきれないものがあります。そして、ご自身の歯がどちらに当てはまるかによって、歯を残せる可能性は大きく変わります。
髙井歯科クリニックでは、日本歯内療法学会専門医が、歯科用CTとマイクロスコープを用いた精密な診査診断のもと、全症例でラバーダム防湿を行う精密根管治療を提供しています。他院で治療を受けたものの改善しない歯や、抜歯と説明された歯についてのご相談も数多くお受けしています。
本記事では、根管治療が治らない7つの原因と、そのうちどこまでが歯を残せる可能性のある状態なのか、そして治らないときに残されている治療の選択肢について詳しく解説します。現在の状態にお悩みの方にとって、次の一手を決める判断材料になる内容です。
目次
- 根管治療が「治らない」とはどういう状態か
- 根管治療が治らない原因は大きく2つに分けられる
- 根管治療が治らない7つの原因
- 何ヶ月も治らない・治療が終わらないと感じた際に
- 根管治療が治らないときの治療の選択肢
- 治らない状態を繰り返さないために
- まとめ:根管治療が治らない原因を見極めることが、歯を残す第一歩になります
- 根管治療が治らないことについてよくある質問
- 根管治療をしても治らないのはなぜですか
- 根管治療を何回しても治らない場合はどうすればよいですか
- 根管治療は何回まで繰り返せますか
- 根管治療後も痛みが続いていますが、治っていないのでしょうか
- 根管治療後の違和感が続いていますが、治っていないのでしょうか
- 膿(フィステル)が出ているのに痛みがないのは、治っているということですか
- 歯茎の膿が続いていますが、自分で押し出しても大丈夫ですか
- 根管治療後に膿が出ているのは治っていないのでしょうか
- 根管治療が数ヶ月以上続いて長引いているのですが大丈夫でしょうか
- 根管治療が治らない場合、再根管治療で治りますか
- これ以上根管治療ができないと言われましたが、歯根端切除術や意図的再植術で治せますか
- 治らない歯はいずれ抜歯になりますか
- 根管治療が治らない場合、いつセカンドオピニオンを受けるべきですか
根管治療が「治らない」とはどういう状態か

そもそも、根管治療を行っても治らないとはどういう状態を指すのでしょうか。いくつかの基準がありますが、上記のような状態は”治っていない”可能性があります。また、多くの患者様がお悩みになるのは、痛みや違和感ではないでしょうか。根管治療を受けた歯は、そうでない歯に比べて違和感や不快感は残る傾向にあります。そのため、ひとつの症状だけでは判断が難しく、「初めの状態と比較して軽減しているのか増悪しているのか」「現在抱えている問題が、痛みなのか、それとも違和感なのか」によっても、次に取るべき一手が大きく異なります。
根管治療が治らない原因は大きく2つに分けられる
根管治療が治らない原因は、歯科医師側の処置や環境づくりといった治療環境によるものと、歯そのものに問題があるものの2種類にわけることができます。前者に該当する場合は、治療を受ける歯科医院を変えてみることで歯を残せる可能性がありますが、後者に該当する場合はどのような治療を行っても保存は難しいといえます。また、次項からは根管治療が治らない原因について詳しく解説しますが、原因はひとつではなく、複数の要因が重なっていることもあります。
根管治療が治らない7つの原因

根管治療が治らない場合、その原因は大きく「治療の問題」と「歯そのものの問題」の二つにわけることができます。
原因①ラバーダム防湿を使わない根管治療

根管治療は、根の中に感染した細菌をどのように減らすかを目的とした治療です。そのため、前提として重要なのは根の中に細菌を”入れない”ことです。この前提を達成するために必要なのがラバーダム防湿です。ラバーダム防湿は、ラバーダムというゴムのシートで歯を隔離し、唾液の侵入を防ぐ処置です。唾液には膨大な数の細菌が含まれるため、ラバーダムなしでの根管治療は、どれだけ回数をかけて治療をしても細菌が減少せず、治らないという結果に繋がります。どのような最新機器や材料よりも、このラバーダム防湿を使っているかどうかが重要であるといえます。
ラバーダムはしんどい?

日本におけるラバーダム使用率は10%未満とも言われており、これまでラバーダムを経験したことがない患者様が大多数です。そのような患者様から「ラバーダムを使って治療するのはしんどいのでは?」とご質問をいただくことも多くありますが、ラバーダム防湿は治療をツラくさせるものではありません。むしろ、初めて使用した多くの患者様から、「思っていたより全然楽だった」「あった方が安心して治療が受けられる」とお声をいただくことも数多くあります。
また、根管治療の治療時間は概ね1時間程度ですが、「治療中は口を開けっぱなしにしないといけないのか?」とのご質問に対しては、開口器という口を開けるのを助けるブロックのようなものを噛んだ状態で維持していただくか、もしくはご自身で少し閉じたり開けたりを繰り返していただくか、患者様が楽な方を選択いただけます。
ラバーダムの使用により、治療中の薬剤が口の中に漏れることや、小さな器具や材料が落ちるという心配もなくなり、安全面でも非常に優れた利点があります。初めて使用するという方も、どうぞご安心ください。
>>ラバーダムなしで根管治療を開始したが痛みが続いている30代女性患者様|根管治療におけるラバーダムの重要性
原因②むし歯の取り残し

根管治療を開始する前処置として、虫歯を取り除くことが必須です。虫歯が残ったまま根の中の処置を進めると、その部分から細菌が持続的に侵入し、どれだけ根の中を清掃しても治らないという原因になります。
「虫歯なんて当然取り切っているのでは?」と思われるかもしれませんが、”虫歯を完全に取り除く”ことは、時に根管治療時においてあまり重要視されていないことがあります。つまり、残念ながら「虫歯が残ったまま根管治療がされていること」がありえるということです。
また、虫歯は歯の色を指標にするものではなく、「黒い=虫歯が残っている」というわけではありません。歯の内部の元々の暗い色味や、金属修復物の影響で歯質が変色している場合、それらを指標にすべてを削ることは、オーバートリートメント(過剰な治療)であるといえます。
隔壁を作る前にむし歯を取り切る必要がある

根管治療では、虫歯を取り切った上でレジンという隔壁を作ります。これは、歯の周りに”壁”を作り、ラバーダムを装着したり、封鎖材料を維持することを目的にしています。この時、虫歯が残っているとレジンが歯質と接着せず、細菌の漏洩や隔壁が脱離する原因にもなります。
>>根管治療中の仮蓋はすりへっても大丈夫?根管治療中の白い仮封材料について、専門医が解説
拡大視野での確認が取り残しを防ぐ

虫歯の除去は、肉眼でも大まかに行うことは可能ですが、細かな部分は削るべきかの判断が難しい場合もあります。そのため、虫歯除去の時点では、拡大鏡やマイクロスコープを使用して、より精密に処置を行うことが、虫歯の取り残しを防ぐためには有効です。
原因③見逃された根管がある

根管治療は細い根の中の道筋を探る精密な治療であり、多くの根管はまっすぐ大きく開いているわけではありません。また「この歯の根管は何本あってこういう形態をしている」とある程度の指標はありますが、バリエーションに富み、イレギュラーな形をしていることも少なくありません。
特に、隠れた根管が見逃されていると、その根管の中は清掃が一切されていない状態となり、治らない原因となります。しかし、隠れた根管は非常に細く、入り口も狭いため、そもそも見つけることが難しく、また処置も通常の根管よりも難易度が大きく上がる難症例であるといえます。
根管が見つかりにくくなる条件

長期にわたって虫歯がゆっくりと進行している歯や、年齢による加齢変化が歯髄に起こっている歯の場合、根管の内部の象牙質が添加する生理的な反応によって、歯の神経が徐々に細くなるという現象が起きます。
根管治療で使用する器具は非常に細いものの、それよりもさらに根管が細い場合、内部の清掃を行うことが物理的にできません。しかし、そのような場合、やみくもに歯の中を削るのではなく、器具が進むところまで確実に処置ができれば、十分に治癒が見込めます。
「根の先まで器具や材料が届いていないから治らない」と言われますが、そういった事実はなく、必要な処置を適切に行うことが重要といえます。
>>根管が石灰化していて器具が入らない【60代女性】根の先まで薬が届いていなくても治癒する可能性_症例58
上顎第一大臼歯に高い頻度で存在するMB2

上顎の第一大臼歯(6番)には、MB2という隠れた根管が存在しています。MBとは、近心頬側という歯の根管の位置を示すことばで、その根管の副根管であることから、MB2といわれます。上顎6番のMB2の発現頻度は50%以上と言われており、専門医へご紹介いただく上顎6番の多くは、MB2が手付かずの状態です。
実際に多くの根管治療を行う中でも、以前の根管治療が治らない原因として、MB2が未処置の状態であり、MB2を処置することで問題が解決することが非常に多い印象です。
『歯科医院でちゃんと治療すれば、こうしたMB2のような根管を見逃すなんてことがあるのか』と思われるかもしれませんが、根管治療を専門としていない場合、通常の根管であっても発見、清掃が難しく、特にMB2の適切な処置は非常に難易度が高い治療であるといえます。
>>根管治療が終わったばかりだが、痛みが続いておりもう一度根管治療のやり直しと言われた【50代女性】_症例37
原因④繰り返し治療を受けている

根管治療は、治療の回数を重ねると治るわけではありません。むしろ、歯が徐々に削られる、本来の根管が見失われるなど、様々な問題が起こるリスクがあります。つまり、繰り返しの治療はよくなるどころか、むしろ治すための条件として悪化していくといえます。
一般的には、”薬の交換が必要”と言われ治療回数がかかりますが、薬の交換にあまり効果はなく、治療自体も1回もしくは2回で終えることができるのが理想的であるといえます。
再治療は初回治療より成功率が下がる

一度根管治療を受けた歯の再治療は、根管充填の古い詰め物の除去が必要なだけでなく、元の根管形態が破壊されていたり、細菌感染もより強固に起こっているなど、治療の難易度が高くなります。成功率をみても、初めて根の中を触る初回治療よりも、再根管治療の方が、成功率は15〜20%ほど低下します。つまり、初回の治療、初めて根の中を触る治療をどれだけ丁寧に行うかが、その歯の予後を大きく左右するといえます。
>>根管治療は、過去に治療を受けた歯の再治療の方が成功率が下がる
治療のたびに歯が薄くなっていく

根管治療では、歯の内部を多少なりとも切削します。少ない回数で、適切な治療を行えば、歯質の切削は最小限に抑えることができます。しかし、治療を繰り返すたびに、残った歯質は薄くなります。薄くなった歯質はヒビが入りやすく、後述するクラックや歯根破折のリスクが一気に上昇します。治療ができる回数に明確な規定はないものの、治療のたびに歯が削られ薄くなるため、実質的には治療できる回数には限界があるといえます。
原因⑤専門的な診断と治療を受けられていない

根管治療は、歯科治療の中でも術者の知識・経験・設備によって結果が大きく変わる治療です。特に、原因の特定そのものに専門的な診査が必要なケースも少なくありません。原因が分からないまま治療を開始し同じ処置を繰り返しても、改善が見込めないだけでなく、余計に痛みが増し、問題が複雑化することもあります。
「とりあえず治療してみましょう」という判断は、大切な歯を失うことにも繋がりかねません。正確な診断と原因の特定が、治療そのものと同じぐらい重要なポイントだといえます。
原因⑥歯にヒビ(クラック)が入っている

根管治療が治らない原因の多くに、歯のヒビ・クラックが挙げられます。歯に入ったヒビは肉眼でわかる場合もあれば、マイクロスコープで大きく拡大しなければ見えない場合もあります。わずかなヒビでも、細菌は非常に小さいため、ヒビの隙間から侵入し増殖するため、根の中をしっかりと清掃しても新たな感染が起こるリスクがあります。ヒビが入りやすい状況としては、噛む力が強い患者様、何度も治療を受けている歯、大きな土台(ポストコア)が入っており歯質が薄い歯などが挙げられます。
ヒビの程度によって治療方針が変わる

ヒビが入っている状態でも、ヒビの程度により治療方針は異なります。左のように、明らかに分離して割れている場合は抜歯となりますが、右のように”わずかなヒビ”の場合、根管治療を行い歯を残せる可能性があります。しかし、ヒビの隙間からの細菌感染や、ヒビが大きくなり歯根破折へ進展する可能性もあり、長期的な予後には不安がある状態といえます。治療をしても改善しない可能性もあり、十分にご理解いただいた上での治療介入が必要です。
根管治療を受けた歯はもともと破折しやすい

根管治療を受けた歯と受けていない歯では、破折するリスクに大きな差があると報告されています。また、その中でも破折する危険性が高いのは、「根管治療を受けてクラウンが装着されていない奥歯」であるともいわれています。根管治療と補綴(かぶせもの)治療の両方を精密に行うことが、歯を長持ちさせるために必要な条件であるといえます。
原因⑦歯質があまり残っていない

1本の歯を治療するうえで、残っている歯の量が多いか少ないかは極めて重要な要素です。なぜなら、根の中の処置が適切に行えたとしても、その歯を長期的に維持できなければ歯そのものは抜歯になってしまうからです。
残っている歯が少ない場合、先述の隔壁が作れないため根管治療にとって不安要素になります。また、根管治療が行えた場合でも、薄い歯質は将来的にヒビや破折の原因になり、また被せ物を被せる際にもそれを維持することができなくなります。
もちろん、大きく歯が削られている歯であっても、根管治療と被せ物の治療を適切に行うことで、長期にわたり歯を残せることも多くあります。
一方で、以下のように「根の問題が治って被せ物を装着したが、数年で歯が破折してしまう」ということも残念ながら起こり得ます。
歯の破折は、いつどのタイミングで起こるかはわかりません。
あまりにも歯質が少ないような場合には、根管治療ができるかどうかではなく、その歯が長くもつかどうかという視点から、抜歯が推奨されることもあります。
⚫️数年後抜歯になったケース
何ヶ月も治らない・治療が終わらないと感じた際に

根管治療は、一般的には回数がかかる治療と言われます。しかし、本来根管治療は”根の中を綺麗にし終わったら、早めに詰め物で封鎖すること”が推奨されています。次項からは、根管治療が何回ぐらいかかるのか、どれくらい通院が必要かについて解説します。
通院回数と期間の一般的な目安

症状や歯の状態によって異なりますが、専門的な処置を行えば、ほとんどのケースで根管治療は1回もしくは2回で終了します。
回数が増える背景には、無菌的環境やマイクロスコープの有無、診療環境による制限など、さまざまな事情があり、その歯科医院の診療環境によって、根管治療の回数や期間はおおよそ決定されるといえます。
>>10回以上根の治療に通っているが治らない【20代女性】根管治療における薬の交換と治療回数_症例6
治療を中断した歯は難易度が上がる

根管治療の中断は、多くの問題を引き起こします。特に仮蓋として使用される白い材料は、数週間であれば細菌の侵入を防いでくれますが、数ヶ月治療の間隔が空いてしまったり、封鎖材料が完全に脱離したりすると、根管内への細菌の新たな侵入を引き起こします。痛みが引いた場合でもそのままにせず、早めに次の治療を受けた方がよいでしょう。
>>根の治療中に、封鎖している白い材料が取れてしまったら?根管治療中の仮の封鎖材料について専門医が解説
相談先を見直すことを検討したほうがよい状況
治療を重ねても症状に変化がない、原因についての説明が十分に得られないといった状況では、専門的な診査や治療を受けるという選択肢があります。
歯科医院ごとに、専門とする治療は異なります。当院でも、他院で根管治療を受けた歯、あるいは受けている途中の歯のご相談を数多くお受けしています。
以下のリンクでは「初めて当院を受診された患者様とのやりとり」を公開しています。根管治療でお悩みの患者様の、選択肢のひとつとなれば幸いです。
根管治療が治らないときの治療の選択肢

根管治療が治らない場合、次に取る選択肢として3つの方法が挙げられます。もう一度根管治療を行う再根管治療、根の先端部分を切る外科的歯内療法、そして抜歯です。ここでは、それぞれについて詳しく解説します。
再根管治療(非外科的歯内療法)

根管治療が治らない場合にまず第一候補として挙がる治療は、再根管治療、つまり根管治療のやり直しです。再根管治療では、過去の治療の詰め物や修復物を一度除去し、改めて根管内を清掃、消毒します。特に、以前の根管治療でラバーダムが使われていない場合や、未処置の根管の存在が疑われるような場合には、治療の質を大きく改善できる可能性があります。
同じ環境でのやり直しには限界がある
ただし、再根管治療を行う際には、同じ歯科医院で、同じ設備、同じ手順でそのまま治療をやり直しても、改善する見込みは高くありません。なぜなら、根管治療は1回目の治療よりも2回目の治療の方が成功率が下がり、難易度は上がるからです。そのため、根管治療のやり直し、再根管治療を受ける際には、「もう一度治療をして、根管治療の質を上げることができるか?」という視点で医院選びをすることが大切です。
当院では、1回目の治療でラバーダムやマイクロスコープを使った精密な治療を行い、それでも治らなければ後述する外科的歯内療法で対応し、歯の負担が最も少ない方法を考え治療を行っています。
外科的歯内療法

根の先端部位には、多くの枝分かれや細い根管が隠れており、いかに精密な根管治療を行っても、完全に細菌を除去することはできません。そして根管治療が治らない場合、特に原因となるのが根の先端付近の細菌感染であるといわれています。
そのような場合に次の治療の選択肢となるのが、外科的歯内療法です。外科的歯内療法では、感染が集中している根の先端部分を物理的に取り除く方法です。どのように切除するのか、そのアプローチ方法によって、歯根端切除術と意図的再植術のふたつの方法にわけることができます。
>>外科的歯内療法とは?歯根端切除術・意図的再植術の違いや選択肢を解説
歯根端切除術

歯根端切除術とは、麻酔をした上で歯茎を切開して歯の根の先を露出させ、根の先端およそ3mmを病変とともに取り除く治療方法です。歯根端切除術は、口腔外科でも行われている治療ですが、本来は根管治療の延長線上にある治療です。マイクロスコープを用いた現代の術式では、成功率はおよそ90%と報告されており、根の先端に破折やヒビがなければ、高い確率で問題を解決することができます。
>>歯根端切除術とは?根の先の膿や嚢胞を取り除き、歯を残す外科的根管治療|【大阪の歯内療法専門医】
意図的再植術

意図的再植術は、根の先端およそ3mmを切除するという点では歯根端切除術と同じですが、そのアクセス方法が異なります。意図的再植術では、一度歯を抜いて、口腔外で処置を行い、元の位置に戻すという治療が行われます。
特に適応となるのが、第二大臼歯(7番)のように口腔内からの歯根端切除術では器具が届かない場合や、解剖学的に制約がある場合などです。
過去の文献でも意図的再植術の成功率は85〜90%程度と報告されています。また、歯を抜いて精査するため、「破折やヒビが入っていないか?」をくまなく確認できることも大きな利点です。
歯根端切除術か意図的再植術か、どちらの術式を選ぶかは、歯の位置、顎の骨の形態、神経の走行などから総合的に決定されますが、どちらの治療もアドバンスな治療であり、正確に行うためには、より専門的な処置が行える環境が必要です。
>>意図的再植術とは?歯を抜いて戻す特殊な根管治療で歯を残す方法|【大阪の歯内療法専門医】
根の先を切っただけでは再発することがある

当院には、過去に歯根端切除術を受けたことがあり、再発したためセカンドオピニオンとして来院される方も少なくありません。その多くが、歯茎を切開して根の先を切除した”だけ”の状態です。歯根端切除術は、根の先を切るだけでは治りません。実際には、切断面をマイクロスコープで精査し、切除した部位からさらなる清掃を行い、最後はMTAセメントを使って逆根管充填を行います。
根の先の切除量とその角度、逆根管形成の量、逆根管充填の質など、専門的かつ非常に細かなステップを確実にクリアしてはじめて、90%という高い成功率が得られます。
再度の外科的アプローチが必要になると、患者様の身体的・金銭的なご負担も増加します。できる限り1回の外科治療で”しっかり治しきる”ことがベストであるといえるでしょう。
>>過去に歯根端切除術を受けた歯が再発し、専門的治療を求めて来院した40代女性患者様|歯根端切除術の治療方法と再発について解説
抜歯という判断

歯が割れている場合や、根管治療や外科的歯内療法を行っても改善する可能性が低い場合などには、抜歯が第一選択となります。
保存の見込みがないままの状態でも、”ダメ元で”治療を行うという選択もありますが、長期的な口腔全体の健康にはつながらず、その他の問題にも繋がるため、あまり推奨はされません。
治らない状態を繰り返さないために

歯の治療は、何度もできるわけではありません。特に根管治療は、治らなければ歯の寿命にとって致命的な問題となります。また、根管治療は根の中の問題だけでなく、その後のかぶせものの治療によっても結果が大きく左右されます。治らない治療を繰り返さないためのポイントを解説します。
1回目の治療の質が歯の寿命を左右する

歯科治療は、再治療になるほど歯の寿命に近づきます。だからこそ、可能であれば歯の神経の保存を試み、根管治療を回避することが大切です。その上で根管治療が必要になった時に大切なことは、ラバーダムやマイクロスコープを使って、無菌的な治療を行うことです。
特に根管治療は、初めて行う根管治療と、過去の根管治療のやり直しである再根管治療では、成功率が大きく異なります。
神経を残せるなら残し、そして残せない場合は1回目の治療を精密に行うことが、歯の寿命を左右するといえます。
>>歯髄保存療法を希望して来院した30代男性患者様|歯髄保存か根管治療の診断基準
根管治療後のかぶせ物まで含めて考える

根の中の清掃をして封鎖をしても、その後の被せ物の適合が悪ければ、隙間から細菌が侵入し再感染が起こる可能性があります。過去の研究でも、「根管治療を成功させるためには精密な被せ物の治療が必要」と報告されています。被せ物というと、見た目の美しさが重視される傾向にありますが、根管治療を行った歯の修復治療は、審美性だけでなく、「再発防止とそのための適合精度」が歯にとって非常に重要となります。
まとめ:根管治療が治らない原因を見極めることが、歯を残す第一歩になります
根管治療が治らない原因は、歯科医師側の処置で防ぐことができるもの(ラバーダムの使用、虫歯の完全除去など)と、歯そのものに起因するもの(歯の破折や難易度が高い状態など)の大きくふたつにわけることができます。
治らないからといって、そのすべてが抜歯となるわけではありません。前者であれば、治療の環境を変えることで歯を残せる可能性があります。
なぜ治らないのか、残すことができる可能性があるのか、歯の不安を解消するためには、専門的なクリニックでのCTやマイクロスコープを使用した精密検査が欠かせません。原因がわからないまま同じ処置を重ねても、状況が劇的に変わることは難しいといえるでしょう。

大阪府豊中市の髙井歯科クリニックでは、年間300症例、累計2000症例以上の精密根管治療の実績をもつ日本歯内療法学会専門医が、根管治療が治らない原因の精査や歯の保存の可能性について詳しくお伝えします。
根管治療が治らないとお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
根管治療が治らないことについてよくある質問
根管治療をしても治らないのはなぜですか
根管治療が治らない原因で最も多いものは、ラバーダムが使用されず、必要以上に治療回数がかかっていることにあります。根管治療は診療環境や歯そのものの難易度によってさまざまですが、「しっかりとした根管治療を受けている」にもかかわらず治らない場合、歯そのものに原因があり、根管治療で治せる限界である可能性もあります。そのような場合には、歯根端切除術や意図的再植術が、歯を残すための次の選択肢となります。
根管治療を何回しても治らない場合はどうすればよいですか
同じ診療環境で治療を続けていても、大きく状況が改善しない可能性があります。根管治療に精通している歯科医院であれば、1回もしくは2回程度で治療は完了します。明確な基準はありませんが、5回以上かかっている場合、歯そのものに問題がある可能性や、診療環境に限界がある可能性が考えられます。
根管治療は何回まで繰り返せますか
根管治療が可能な回数は、明確に決まっているわけではありません。しかし、治療を重ねるごとに残存歯質は薄くなるため、実質的には2〜3回が限度であると考えられます。歯を残すためには、なるべく早い段階で原因を特定した上で治療方針を決め、精密な治療を受けることが大切です。
根管治療後も痛みが続いていますが、治っていないのでしょうか
必ずしも治っていないとは言い切れません。特に、治療開始前に元々痛みがあった場合、根管治療後の痛みはすぐに消失しないこともあります。慢性化しているような痛みの場合、軽減に半年〜1年程度かかることもあり、痛みは必ずしも治っているかどうかの指標にはならないといえます。
根管治療後の違和感が続いていますが、治っていないのでしょうか
根管治療後の違和感は、根管治療がうまく治っていても残り続ける可能性があります。特に、歯の内部が元々大きく削られている場合、残った歯が薄くなり、わずかな力で歯が響く感覚が残りやすいと言われています。もちろん、治っていないことにより違和感が出ることもありますが、根管治療を受けた歯は違和感が残りやすく、正常な反応の範囲内であるといえます。
>>根の治療後の違和感は大丈夫?根管治療後の違和感や不快感について、専門医が詳しく解説
膿(フィステル)が出ているのに痛みがないのは、治っているということですか
いいえ、そうとも言い切れません。根の先の膿は、フィステルといいます。フィステルが出ている間は、根の先の炎症の圧力が外部に逃げている状態のため、痛みが軽い、あるいは痛みがないことがほとんどです。しかし、痛みがないことが治っているサインというわけではありません。一方で、根管治療を受けた直後であれば、膿が数ヶ月かけて徐々に消失する場合もあります。状況によって判断は異なるため、歯科医院へ相談するのがよいでしょう。
>>フィステル(歯茎の白いできもの)とは?症状・原因・治療法を日本歯内療法学会専門医が詳しく解説
歯茎の膿が続いていますが、自分で押し出しても大丈夫ですか
歯の根の問題による歯茎の膿は、自分で押し出しても特に問題ありません。しかし、押し出してもまた新たに出たり引いたりを繰り返すため、押し出すことにあまり意味はありません。
根管治療後に膿が出ているのは治っていないのでしょうか
そうとも言い切れません。根管治療は治るのに時間がかかる治療です。治療後すぐに膿が消える場合もあれば、数ヶ月が経過して徐々に消える場合もあります。治療後すぐの場合、これから治る可能性もありますが、半年〜1年が経過して膿が出ている場合、治っていない可能性が高いといえます。
>>根管治療後はいつまで経過観察が必要?大阪の専門医が根管治療後に様子をみる期間と注意点を解説
根管治療が数ヶ月以上続いて長引いているのですが大丈夫でしょうか
根管治療の方法は歯科医院により異なるため一概にはいえませんが、細菌感染を減らすという点では、あまり望ましくはありません。根管治療を専門とする歯科医院であれば、ほとんどの根管治療は1回もしくは2回で終了します。
根管治療が治らない場合、再根管治療で治りますか
再根管治療で治る可能性はあります。ただし、歯そのものがしっかりとしているか(残存歯質の量)、そして細菌を十分に減らすことができるかが重要です。再根管治療の成功率は、ラバーダムやマイクロスコープを使用した場合おおよそ70%程度といわれています。
これ以上根管治療ができないと言われましたが、歯根端切除術や意図的再植術で治せますか
根管治療ができない状況においても、歯根端切除術や意図的再植術で治る可能性があります。何度も根管治療を繰り返すと、その度に歯が薄くなり、歯根破折のリスクが上がります。根管治療では解決が難しい場合、外科的歯内療法によって歯を残せる可能性があります。
>>根管治療ができないケースとは?治療できない歯の判断基準と残せる可能性を専門医が解説
治らない歯はいずれ抜歯になりますか
必ずしもそうとは言い切れません。治らない原因が、ラバーダムの未使用、むし歯の取り残し、見逃された根管といった原因であれば治療の質を変えることで残せる可能性があります。一方で歯根破折や歯質の大幅な喪失では、歯を残すことは難しくなります。
根管治療が治らない場合、いつセカンドオピニオンを受けるべきですか
今現在治療中の場合、4〜5回を超えて治療を続けている場合、一度根管治療を専門とする歯科医院へ相談してもよいかもしれません。治療が終了して治っていない場合、再根管治療、外科的歯内療法、あるいは抜歯のいずれかの選択肢となりますが、特に外科的歯内療法はより難易度が高い治療であるため、専門的な病院へ相談するのがよいでしょう。
執筆・監修者情報
髙井歯科クリニック 院長
髙井 駿佑Shunsuke Takai
根管治療(歯の神経の治療)を専門とし、マイクロスコープとラバーダム防湿を用いた精密根管治療を2,000件以上担当。大阪大学歯学部附属病院での研修後、医療法人晴和会うしくぼ歯科で副院長を務め、2023年に髙井歯科クリニックを開院。日本歯内療法学会専門医として、歯科医師向けセミナーの講師や専門誌・書籍の執筆も行っています。
経歴
- 2007年県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 日本外傷歯学会 認定医
- 日本臨床歯周病学会 認定医
- 米国歯内療法学会 Specialist member
- 日本医療機器学会 第2種滅菌技士
本記事は、髙井歯科クリニック 院長・髙井 駿佑(日本歯内療法学会 専門医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表・論文等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。
院長紹介を見る

