歯を残したい 歯科からの紹介 症例紹介 痛みが取れない 臼歯

背景と経過

かかりつけの歯科医院にて根管治療を開始したものの、昔に治療をした時の古い器具が折れていることを理由に、専門医での受診を勧められ来院された患者様です(かかりつけ歯科医院からのご紹介)。根の中でファイルという器具が折れている状態であり、さらにパーフォレーションも併発している複雑な状態でした。

この患者様のセカンドオピニオン時のやりとりについては下記をご覧ください。
▶器具が折れているとかかりつけの歯科医院で説明され、専門医での治療を勧められた60代女性患者様

症例紹介

初診来院時の状態

右上の6番(第一大臼歯)に、根の先の黒い影(根尖性歯周炎)と、その根管内に破折ファイルと思われる不透過像が認められる状態でした。器具が残っているから治らないというわけではありませんが、器具がある部分は根管内の清掃・感染源の除去が十分に行えないため、可能であれば除去する方針で治療を進めることになりました。根の湾曲はそこまでなく、破折位置も浅いことから、おそらく除去は比較的容易と判断しました。

実際の治療

ステップ1

根管内を探索してすぐに、根の中のパーフォレーションが認められました。パーフォレーションとは、歯の本来の根管の方向とは異なる位置に穴があいてしまう偶発症です。おそらく、破折ファイルが起こっていることに気付かぬまま器具操作を行い、根管の中を突き抜けてしまったと推測されます。
(青:本来の根管 黄:パーフォレーション)

ステップ2

破折ファイル断端の位置を視認した状態を保ちながら、まずはパーフォレーションの部位に対してMTAセメントで封鎖を行いました。これにより、根の中が外部と交通し、持続的な細菌感染が起こることを防ぎます。

ステップ3

破折ファイル除去時のマイクロスコープの写真です。術前のレントゲンから予測できる通り、かなり長い器具が破折して食い込んでいる状態でした。EDTAと超音波を併用して、無事に除去が完了しました。

ステップ4

破折ファイルを除去し、本来のオリジナルの根管の方向や道筋が確認できました。これで、破折ファイルがあり清掃の妨げになっていた部位に対して、十分な感染源の除去が行えます。

ステップ5

根管充填に使用するガッタパーチャポイントの到達位置の確認です。未処置であった他の根管も、根の先端付近まで器具が届いているのが確認できます。

ステップ6

破折ファイル除去とパーフォレーションリペアを行った後に、根管充填まで完了しました。

フォローアップ

12ヶ月後の経過観察

治療前
治療後12ヶ月

根の先にハッキリと写っていた黒い影も、術後12ヶ月では完全に消失し、治癒傾向を示しています。
患者様の症状もなく、良好な経過をたどっています。

患者様のご感想

右上の奥歯は何度治療してもらっても治らなかったため、ほとんど諦めかけていました。ただ、元の先生から「根の治療の専門の先生なら治せるかもしれない」と紹介されて来ましたが、根の治療に専門の先生がいること自体知りませんでした。おかげさまで、今は右上の奥歯は何の違和感もありません。抜いたらインプラントを勧められていたので、自分の歯を残せて本当によかったです。

Drからのコメント

破折ファイル除去の依頼症例でしたが、実際にはパーフォレーションも併発している状態でした。何度も治療を受けているうちに、気付かぬうちに歯が徐々に薄くなり、最終的には今回のようにパーフォレーションを起こしてしまう可能性があります。元の原因は器具の破折ですが、器具の破折そのものを完全に防ぐことは難しく、一定の確率でどうしても起こりうる偶発症であるといえます。
今回は無事に根管治療のみで治癒しましたが、根管のダメージが蓄積している歯や、感染が強い歯の場合は、外科的歯内療法が必要となることもあります。

治療詳細

主訴破折ファイルとパーフォレーションの両方が起こっている
治療内容上顎大臼歯の精密根管治療
治療期間2回
費用根管治療165,000円(税込)
リスク・副作用根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。

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▶根管治療で器具が折れて針が残る「破折ファイル」とは|除去の必要性と判断基準
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監修者情報

院長 髙井 駿佑

経歴

  • 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
  • 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
  • 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
  • 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
  • 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
  • 2023年 髙井歯科クリニック 開院

資格

  • 日本歯内療法学会 専門医
  • 米国歯内療法学会 会員
  • 日本外傷歯学会 認定医
clinic

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