症例紹介 前歯 外科的歯内療法 歯を残したい

背景と経過

上の前歯の歯茎の腫れと違和感を覚え近医を受診したところ、根の先に膿があり骨が溶けていると説明を受けた患者様です。セラミックのクラウンが装着されており、できれば外さずに治療をしたいと希望したところ、根の先を切る歯根端切除術を提案され、当院を受診されました。左上の前歯2本に根の先の問題があり、2本同時の歯根端切除術を行いました。

この患者様のセカンドオピニオンの際のやり取りについては、こちらをご覧ください:
▶根の先を切る外科治療が必要になった 40代男性患者様|2本同時に行う前歯の歯根端切除術

症例紹介

初診来院時の状態

左上1番と2番の2本の根の先に、レントゲンで黒い影(骨吸収像)が認められます。根管内はすでに大きく切削されている点、セラミッククラウンが装着されている点から、通常通りの根管治療ではなく、歯根端切除術の適応であると診断しました。

患者様には、以下の点をご説明し、同意を得た上で治療を開始しました。

  • 歯茎を切開するため、術後に必ず歯肉退縮が起こる。それに伴いセラミックの境目が露出し、クラウンのキワが暗く見えたり、歯が長くなったように見える可能性がある。
  • 術後、軽度から中程度の痛みや腫れが出る。おおよそ3日程度で軽減し、その間は痛み止めを服用して過ごしていただく。日常生活に支障が出るほどの症状はまれ。
  • 歯茎を開けて精査し、歯にクラック(ヒビ)が入っていた場合、治療の継続は不可能。その場合は後日抜歯が必要になる。
  • 歯茎や口唇をグッとおさえて治療するため、術後鼻の下に内出血による青あざが出る可能性がある(内出血は2〜3週間で自然に消失する)。
  • 治療の成功率は90%程度で、治癒まで最低でも6ヶ月は時間がかかる。

今回の患者様はセラミッククラウンが装着されており、歯茎の外科治療後は、天然歯よりもクラウン装着部の方が大きく歯肉が退縮する傾向にあります。患者様は、審美性はそこまで気にならないので、病気をしっかり治したいとのことで、治療を希望されました。

治療前の分析

歯根端切除術は、単に歯茎を開けて根の先を切るだけではありません。術前にミリ単位で歯の状態を把握し、何ミリ切除し、どのように処置を行うのがベストか、綿密な計画を立てて治療を行います。

実際の治療

歯茎を切開し、根の先の膿を取り除き、感染源となっている根の先およそ3mmを取り除きます。この時、常にマイクロスコープ(顕微鏡)を使用することで、より精密に、より侵襲が少なく治療を行うことが可能です。2本同時であったため切開の範囲はやや広めに行いましたが、通常の局所麻酔で治療中は痛みを感じることなく処置を行うことができました。

6ヶ月後の経過観察

術前にはっきり写っていた根の先の黒い影は術後6ヶ月でほぼ消失しており、明瞭な骨の回復が認められます。患者様の症状も完全に消失し、良好な経過をたどっています。

外科に伴う歯肉の退縮

外科治療に伴い、若干の歯肉の退縮が認められます。患者様は、スマイル時に口唇が上がらない(前歯のキワが隠れる)ため、全く気にならないとのことでした。

※今回は退縮量がやや少ないケースでした。理由としては、クラウンの適合が比較的良好であったことが考えられます。歯肉が大きく下がりやすい特徴として、「被せ物の適合が悪い歯」が挙げられます。歯と被せ物(クラウン)の段差が大きいと、術後に大きく退縮しやすいといえます。

患者様のご感想

前歯の歯茎を切ると聞いてとても不安でした。ただ、実際の治療中は麻酔も効いているのか痛みも全くありませんでした。治療後は少し鈍い痛みは数日ありましたが、心配していたほどではありませんでした。歯茎も綺麗に治り、腫れや違和感も完全になくなったので、専門のクリニックで治療を受けて本当によかったです。ありがとうございました。

Drからのコメント

根の先を切る外科治療を、外科的歯内療法といい、今回のように歯茎を切開して行う治療を歯根端切除術といいます。歯根端切除術は口腔外科でも行われていますが、治療そのものは根の治療の延長線上にある治療です。また、マイクロスコープを使って細かな部分まで精査することは必須です。
治療自体は、特に前歯のようにアクセスが良好な場合、30分程度で終了することが多いかと思います。ただ、歯肉の退縮(歯茎下がり)はどうしても完全に回避することはできません。術後に歯茎が下がりやすい特徴として、「段差や隙間がある被せ物が入っている、磨き残しが多くいつも歯茎が腫れている」というものが挙げられます。また、笑った時に歯茎が見えるかどうかでも、歯肉退縮の影響の大きさが異なります。
外科処置によって、根の先の骨は大きく回復・再生し、症状も消失しています。今後も良好な状態が維持されていくと予想されます。

治療詳細

主訴前歯の根の先に膿があり根の先を切る外科治療が必要になった
治療内容上顎前歯の歯根端切除術
治療期間1回
費用歯根端切除術 165,000円(税込)×2歯
リスク・副作用外科的歯内療法は、歯茎の切開・剥離を伴うため、術後の痛みや腫れ、歯肉の退縮などの副作用があります。また、治療は100%成功することを保証できるものではありません。歯茎切開後、歯にヒビが入っている場合は治療の継続は困難であり、抜歯の適応となります。

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監修者情報

院長 髙井 駿佑

院長

髙井 駿佑Shunsuke Takai

経歴

  • 2007年県立宝塚北高等学校 卒業
  • 2013年国立鹿児島大学歯学部 卒業
  • 2014年大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
  • 2016年医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
  • 2019年医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
  • 2023年髙井歯科クリニック 開院

資格

  • 日本歯内療法学会 専門医
  • 米国歯内療法学会 会員
  • 日本外傷歯学会 認定医

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