背景と経過
3年前に他院で精密根管治療を受け、セラミッククラウンを装着していた患者様です。元々根の先が大きく開いている根尖破壊の状態であり、当時の担当医から「MTAセメントを使えば治る」と説明を受けたとのことでした。その後違和感が続いていたものの、数週間前から歯茎の腫れが出るようになり、治療をしてもらった歯科医院で相談したところ、「MTAを使って治らないなら抜歯するしかない」と説明を受け、歯を残したいとの思いから当院を受診されました。自由診療で治療を受けましたが、ラバーダムは使用していなかったとのことでした。
◯この患者さんのセカンドオピニオンの際のやり取りは、下記よりご確認ください:
MTAセメントを使った治療を受けたが治らない 70代女性患者様|「MTAセメントを使えば治る」は本当?
◯歯茎の腫れについてはこちらで詳しく解説しています:
歯茎が腫れて押すと痛い|原因と放置するリスク、根管治療などの正しい対処法
症例紹介
初診来院時の状態〜精密根管治療

左下6番の遠心根にはっきりとした骨吸収像(黄色点線で囲った部分)が認められました。
すでに根管内は大きく形成されており、根尖部も破壊されている状態でした。
ラバーダム防湿を行い無菌的環境を確立したのち、元々充填されていた古いMTAセメントは一度すべて除去しました。その後、根の中の清掃を行いました。最終的には、通常のガッタパーチャポイントでは緊密な充填は難しいと判断し、再度MTAセメントを使用し根管充填を行いました。
経過観察

術後の経過観察でのレントゲン写真です。画像からも、元々あった根の先の黒い影は消失していることがわかります。
主訴であった歯茎の腫れも術後数ヶ月で消失し、4年以上が経過していますが良好な状態を維持しています。
MTAセメントによる根管充填

今回は根尖が大きく破壊されていたため、MTAセメントを使用しました。
このような場合であっても、根の中すべてをMTAセメントで詰める必要はなく、大きく破壊されている部位に限局して使用します。
治療詳細
| 主訴 | MTAセメントを使って治療をしたが治らない |
| 治療内容 | 下顎大臼歯の精密根管治療 |
| 治療期間 | 2回(2週間) |
| 費用 | 187,000円(税込) |
| リスク・副作用 | 根管治療を行った歯は、不快症状が数ヶ月継続する可能性があります。また、術直後は痛みが出る可能性があります。症状の軽減には、およそ半年から1年程度の期間が必要です。臼歯の根管治療歯は歯の破折リスクが上がるため、クラウンによる補綴治療が推奨されます。 |
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患者様のご感想
はじめは、MTAセメントという良い薬を使ったから治っていると思っていました。しかし、ラバーダムや顕微鏡の話は初耳で、根管治療で何が大切なのかということがここでお話を聞いてとてもよくわかりました。MTAセメントを使っても治らないから抜くしかないと聞きショックでしたが、無事に膿も治って腫れもなくなったので、ここで治療を受けてよかったです。
Drからのコメント
MTAセメントは、その特性から根管治療において有用な材料であることは間違いありません。しかし、「MTAセメントを使えば治る」ということはなく、その前提としてラバーダム防湿下でできる限り細菌を減らすという原則を守る必要があります。
本症例では、元々ラバーダムがない状態での治療でしたので、再根管治療を行いました。すでに遠心根の根尖が大きく破壊されていたため、再度MTAセメントを使用し、無事に根の問題は解決しました。
材料が治すのではなく、トータルでしっかりとした治療を行うことが大切であることを示してくれた治療でした。
監修者情報

院長 髙井 駿佑
経歴
- 2007年 県立宝塚北高等学校 卒業
- 2013年 国立鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 大阪大学歯学部附属病院 総合診療部 研修修了
- 2016年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 勤務
- 2019年 医療法人晴和会うしくぼ歯科 副院長 就任
- 2023年 髙井歯科クリニック 開院
資格
- 日本歯内療法学会 専門医
- 米国歯内療法学会 会員
- 日本外傷歯学会 認定医





